セイヨウアカマツ球果エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症
セイヨウアカマツ球果エキス
[化粧品成分表示名称]
・セイヨウアカマツ球果エキス

[医薬部外品表示名称]
・マツエキス

マツ科植物ヨーロッパアカマツ(∗1)(学名:Pinus sylvestris 英名:Scots pine)の球果(∗2)からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

∗1 「ヨーロッパアカマツ」「オウシュウアカマツ」「セイヨウアカマツ」など多様な和名をもちますが、一般に「ヨーロッパアカマツ」が多く用いられます。化粧品成分表示名称としては「セイヨウアカマツ」が用いられています。

∗2 球果とはマツ科、スギ科、ヒノキ科などの樹がつける実のことをいい、マツ科植物の樹がつける球果は「松ぼっくり(まつぼっくり)」「松ぼくり」「松かさ」ともいいます。

ヨーロッパアカマツ(欧州赤松)は、北ヨーロッパを原産とする唯一のマツであり、パルプ材や建築用材に用いられてきた歴史があり、現在においてはこれらの地域で自生・植林しているほか、いくつかの栽培品種が公園や広い庭園に景観植物として栽培されています(文献1:2021;文献2:-)

セイヨウアカマツ球果エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
テルペノイド モノテルペン α-ピネン、α-テルピネオール
セスキテルペン アロマデンドレン、α-ロンギピネン

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献3:2010)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、シャンプー製品、コンディショナー製品、まつ毛美容液、頭皮ケア製品、メイクアップ化粧品、ボディケア製品、シート&マスク製品、スキンケア化粧品、洗顔料、クレンジング製品などに使用されています。

ストレスに起因する肌荒れ・炎症改善作用

ストレスに起因する肌荒れ・炎症改善作用に関しては、まず前提知識としてストレスと肌荒れ・炎症の関係について解説します。

ストレス(stress)とは、もともと抑圧、圧迫、緊張、強制などの意味をもつ物理学用語ですが、現在では生物学・医学分野において不満、怒り、緊張、失望や挫折感、不安など心理社会的な刺激によって生物体内に生じる歪みの反応を表現する言葉として定義されており、疾患にも関与していると考えられています(文献4:2002;文献5:2008;文献6:2019)

とくに職場ストレス問題が存在する都市型社会において、ストレスは日常生活の大きな健康課題であり、皮膚に対する影響としても炎症性皮膚疾患(乾癬、湿疹、アトピー性皮膚炎など)の誘発や悪化(文献7:2001;文献8:2001;文献9:2014)、ニキビ(尋常性ざ瘡)の重症度の悪化(文献10:2003;文献11:2007)、皮膚バリア機能の回復遅延などが報告されています(文献7:2001)

このような背景から、ストレスに起因する皮膚障害を抑制することは、炎症性皮膚疾患の誘発や悪化の防止、ニキビの悪化防止、健常な皮膚の維持のおいて重要なアプローチのひとつであると考えられています。

2004年に一丸ファルコスによって報告されたセイヨウアカマツ球果エキスのストレス負荷肌荒れ皮膚への影響検証によると、

in vivo試験において30匹のマウスを10匹の群に分け、20匹は1/4の広さの飼育ケージに2週間にわたって過密飼育することでストレスを負荷し、残りの10匹は通常の広さの飼育ケージで飼育した。

2週間後に1/4の広さの飼育ケージで飼育した20匹のうち10匹に終濃度10%セイヨウアカマツ球果エキス配合親水軟膏5mgを背部皮膚に5日間連続塗布し、残りの各10匹は対照として何も塗布しなかった。

試験開始から3週間目に親水軟膏に加えて終濃度10%ラウリル硫酸ナトリウム20mgを24時間閉塞貼付することで肌荒れを惹起した。

貼付解放から3時間後に肌荒れ度合いを紅斑を基準として「0:紅斑なし」「1:ごく軽度の紅斑」「2:明らかな紅斑」「3:中程度から強い紅斑」「4:深紅色の強い紅斑に軽い痂皮」5段階で数値化し平均値を算出したところ、以下の表のように、

ストレス負荷 試料 肌荒れスコア
あり セイヨウアカマツ球果エキス 0.9
あり なし 2.2
なし なし 0.6

セイヨウアカマツ球果エキス配合親水軟膏の塗布群は、未塗布群と比較してストレスによって促進される肌荒れを予防改善することが確認された。

次に、ストレスに起因する首筋のコリ、背中や腰の痛み、疲れ、イライラなどの症状を有し、肌のハリやツヤがなくて悩んでいる20人の女性被検者(20-40歳)のうち10人に5%セイヨウアカマツ球果エキス配合乳液を、別の10人に未配合乳液をそれぞれ1日2回(朝夕)3ヶ月にわたって顔面に塗布してもらった。

3ヶ月後に「有効:肌荒れが改善された」「やや有効:肌荒れがやや改善された」「無効:使用前と変化なし」の3段階の基準で肌荒れに対して評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 肌荒れに対する評価(人数)
有効 やや有効 無効
セイヨウアカマツ球果エキス配合乳液 10 1 6 3
乳液のみ(対照) 10 0 1 9

5%セイヨウアカマツ球果エキス配合乳液の塗布は、未配合乳液と比較してストレスに起因する肌荒れに対して改善効果を示すことが確認された。

また、肌のハリ・ツヤについて「有効:肌のハリ・ツヤが増した」「やや有効:肌のハリ・ツヤがやや増した」「無効:使用前と変化なし」の3段階の基準で評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 肌のハリ・ツヤに対する評価(人数)
有効 やや有効 無効
セイヨウアカマツ球果エキス配合乳液 10 2 6 2
乳液のみ(対照) 10 0 3 7

5%セイヨウアカマツ球果エキス配合乳液の塗布は、未配合乳液と比較してストレスに起因する肌のハリ・ツヤに対して改善効果を示すことが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献12:2004)、セイヨウアカマツ球果エキスにストレスに起因する肌荒れ・炎症改善作用が認められています。

複合植物エキスとしてのセイヨウアカマツ球果エキス

セイヨウアカマツ球果エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、セイヨウアカマツ球果エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 Redensyl
構成成分 グリセリン、ピロ亜硫酸Na、グリシン、塩化亜鉛、セイヨウアカマツ球果エキスチャ葉エキス
特徴 毛包幹細胞の分化活性化作用をもつセイヨウアカマツ球果エキス由来DHQG(dihydroquercetin glucoside:ジヒドロケルセチングルコシド)、頭皮のIL-8抑制(炎症抑制)作用をもつ緑茶チャ葉エキス由来のEGCG2(epigallocatechin gallate glucoside:エピガロカテキンガレートグルコシド)、毛髪強化を補助する亜鉛、毛髪タンパク質構成成分であるグリシンを組み合わせ、成長期毛髪の伸長促進、脱毛の減少および毛髪のハリ・コシ強化を目的として設計された複合原料
原料名 ファルコレックスBX32
構成成分 BGニンニク根エキスローマカミツレ花エキスゴボウ根エキスアルニカ花エキスセイヨウキズタ葉/茎エキス、オドリコソウ花/葉/茎エキス、オランダガラシ葉/茎エキスセイヨウアカマツ球果エキスローズマリー葉エキス
特徴 フケ原因菌抑制および過酸化脂質抑制作用目的で設計された9種類の混合植物抽出液
原料名 ファルコレックスBX46
構成成分 BGレモン果実エキススギナエキスホップエキスセイヨウアカマツ球果エキスローズマリー葉エキス
特徴 角質層水分量増加および経表皮水分蒸散抑制による保湿作用、エラスチン保護による抗老化作用、SOD様作用および過酸化脂質抑制による抗酸化作用など、紫外線による皮膚障害から多角的に皮膚を保護する5種類の混合植物抽出液

セイヨウアカマツ球果エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

セイヨウアカマツ球果エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献12:2004)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した背部に乾燥固形分濃度1%セイヨウアカマツ球果エキス水溶液0.03mLを塗布し、塗布24,48および72時間後にDraize法の判定基準に基づいて一次刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚一次刺激性に関して問題がないものと判断された
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に乾燥固形分濃度1%セイヨウアカマツ球果エキス水溶液0.5mLを1日1回週5回、2週にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日の翌日にDraize法の判定基準に基づいて皮膚刺激性を評価したところ、いずれのモルモットも2週間にわたって紅斑および浮腫を認めず、この試験物質は皮膚累積刺激性に関して問題がないものと判断された

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

セイヨウアカマツ球果エキスは抗炎症成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分

∗∗∗

参考文献:

  1. “The Gymnosperm Database”(2021)「Pinus sylvestris」, <https://www.conifers.org/pi/Pinus_sylvestris.php> 2021年4月30日アクセス.
  2. “Wikipedia”(-)「Pinus sylvestris」, <https://en.wikipedia.org/wiki/Pinus_sylvestris> 2021年4月30日アクセス.
  3. X. Yang, et al(2010)「Analysis of the Essential Oils of Pine Cones of Pinus koraiensis Steb. Et Zucc. and P. sylvestris L. from China」Journal of Essential Oil Research (22)(5),446-448.
  4. 長見 まき子・森本 兼曩(2002)「メンタルヘルス入門」産業衛生学雑誌(44)(4),A73-A75.
  5. 霜川 忠正(2008)「ストレス」BEAUTY WORD 皮膚科学用語編,333-334.
  6. 江川 麻里子, 他(2019)「精神ストレスの身体・皮膚への影響」Fragrance Journal(47)(10),15-21.
  7. M. Altemus, et al(2001)「Stress-Induced Changes in Skin Barrier Function in Healthy Women」Journal of Investigative Dermatology(117)(2),309-317.
  8. M. Altemus, et al(2001)「Mitigation of stress‐induced suppression of contact hypersensitivity by odorant inhalation」British Journal of Dermatology(145)(5),716-719.
  9. Y. Chen & J. Lyga(2014)「Brain-Skin Connection: Stress, Inflammation and Skin Aging」Inflammation & Allergy – Drug Targets(13)(3),716-719.
  10. A. Chiu, et al(2003)「The response of skin disease to stress: changes in the severity of acne vulgaris as affected by examination stress」Archives of dermatology(139)(7),897-900.
  11. G. Yosipovitch, et al(2007)「Study of psychological stress, sebum production and acne vulgaris in adolescents」Acta dermato-venereologica(87)(2),135-139.
  12. 一丸ファルコス株式会社(2004)「ストレスによる肌荒れ予防改善剤」特開2004-339113.

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