グリチルレチン酸ステアリルとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 抗アレルギー 美白
グリチルレチン酸ステアリル
[化粧品成分表示名称]
・グリチルレチン酸ステアリル

[医薬部外品表示名称]
・グリチルレチン酸ステアリル

医薬部外品抗炎症有効成分として承認された、マメ科植物カンゾウ(学名:Glycyrrhiza Glabra 英名:licorice)の根茎から抽出して得られるグリチルリチン酸を加水分解して得られるグリチルレチン酸にステアリルアルコールをエステル結合した油溶性のグリチルレチン酸誘導体です。

カンゾウ(甘草)の根茎は、古くから薬用として抗炎症をはじめその効果が広く知られており、グリチルリチン酸(∗1)はカンゾウ根より抽出されるサポニン(トリテルペン配糖体)の一種で、抗炎症作用や抗ウィルス作用などの生理活性を有することが知られています。

∗1 グリチルリチン酸とグリチルリチンは呼び方が違うだけで同様の物質です。

また、配糖体が体内に吸収されるためには、一般的に配糖体からアグリコン(∗2)に変換されることが重要であり、グリチルリチン酸の代表的な薬理作用である抗炎症作用については、グリチルリチン酸のアグリコンであるグリチルレチン酸に存在することが明らかにされています(文献2:1958)

∗2 配糖体とは、糖がグリコシド結合により様々な原子団と結合した化合物の総称ですが、配糖体からグルコースなどの糖が外れたものをアグリコンと呼び、アグリコンは体内に吸収され、機能を発揮します。

こういった背景から、グリチルリチン酸と比較するとグリチルレチン酸のほうが抗炎症作用は高く、また油脂には溶けにくい性質であるグリチルレチン酸にステアリルアルコールをエステル結合することで油溶性(脂溶性)を付加し、クリームや乳液など乳化物に配合可能にしたのがグリチルレチン酸ステアリルです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ハンド&ボディケア製品、リップケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、シート&マスク製品など様々な製品に使用されています(文献1:2007)

抗炎症作用

抗炎症作用に関しては、1958年にイギリスのロンドン大学薬学部薬理学科およびレスター工科大学生物学部によってグリチルレチン酸およびその誘導体の抗炎症活性が評価されたことをはじめ(文献6:1958)、外用薬としての臨床報告も国内外問わずに数多くの報告があります(文献7:1979;文献8:1971)

丸善製薬によって報告されたグリチルレチン酸ステアリルの抗炎症効果検証によると、

ラットを用いたカラゲニン浮腫法により、グリチルレチン酸およびグリチルレチン酸ステアリルの抗炎症効果を、医療用抗炎症剤で広く知られているインドメタシンを陽性対照として、それぞれ0.1%配合リポソーム乳化クリームまたは基剤として検討したところ、以下の表のように、

試料 炎症抑制率(%)
1時間 2時間 3時間 4時間 5時間
なし 36.1±3.78 73.4±3.03 86.3±1.23 87.3±1.77 80.3±1.73
グリチルレチン酸 21.0±2.85 54.1±4.84 55.1±4.71 60.0±4.62 56.9±4.31
グリチルレチン酸ステアリル 24.4±1.62 46.5±2.96 53.0±2.07 54.4±2.79 48.8±2.85
インドメタシン 30.5±3.45 57.4±4.61 65.1±4.47 67/1±3.82 60.9±4.70

0.1%グリチルレチン酸および0.1%グリチルレチン酸ステアリルは、双方ともに抑制率が30-40%と高く、インドメタシンよりも強い効果が示された。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:-)、グリチルレチン酸ステアリルに抗炎症作用が認められています。

Ⅳ型アレルギーに対する抗アレルギー作用

Ⅳ型アレルギーに対する抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識としてⅣ型アレルギーについて解説します。

Ⅳ型アレルギーは、皮膚においてはアレルギー性接触皮膚炎、金属アレルギーなどが該当し、接触物質・原因物質(抗原)に対して抗体を持っている人にのみアレルギー反応が起こり、接触してから24-48時間経過してから症状が現れることから遅延型アレルギーとも呼ばれています(文献10:2002)

ただし、一度の接触では起こらず、刺激が何度か繰り返されているうちに起こり、また刺激物の量や濃度と皮膚炎の程度は必ずしも比例しないため、原因が思い当たらないことが多いです(文献10:2002)

丸善製薬によって報告されたグリチルレチン酸ステアリルのⅣ型アレルギーへの影響検証によると、

Ⅳ型アレルギーに対する効果を検討するために、マウス塩化ピクリル誘発遅延型皮膚反応に対するグリチルレチン酸およびグリチルレチン酸ステアリルのⅣ型アレルギーに対する抗アレルギー作用をそれぞれ0.1%の低濃度で検討した。

その結果、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリルは、塩化ピクリル誘発による浮腫をそれぞれ約20%および約33%抑制した。

このような検証結果が明らかにされており(文献9:-)、グリチルレチン酸ステアリルにⅣ型アレルギーに対する抗アレルギー作用が認められています。

エンドセリン-1産生抑制による色素沈着抑制作用

エンドセリン-1産生抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムとエンドセリン-1について解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化(酸化)し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

エンドセリン-1(ET-1)は、メラニン生合成のメカニズムにおいて、情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)の一種です。

このような背景から、エンドセリン-1の産生を抑制することは色素沈着抑制の観点から重要であると考えられます。

2004年に丸善製薬によって報告されたグリチルレチン酸ステアリルのエンドセリン-1産生抑制効果検証によると、

正常ヒト表皮角化細胞を用いて、紫外線照射によるグリチルレチン酸ステアリルのET-1(エンドセリン-1)に対する影響を検討したところ、以下の表(∗3)のように、

∗3 表中のmRNAとは、メッセンジャー・リボ核酸(messenger RNA)の略で、酵素などのタンパク質を細胞の中で合成するためにDNAの遺伝情報の一部を写し取り、伝達する核酸の一種であり、mRNA発現量とエンドセリン-1の産生量は正比例します。

紫外線 グリチルレチン酸ステアリル ET-1mRNA発現率(%) ET-1産生率(%)
未照射 無添加 100 100±25.0
照射 無添加 189.2 168.6±0.81
照射 添加(20ppm) 127.5 139.1±2.63

グリチルレチン酸ステアリルは、紫外線照射によって増加するエンドセリン-1mRNAの発現量を抑制することが確認された。

次に日焼け、シミまたはソバカスに悩む40人の女性ボランティアを4群(各10人)に分け、0%,0.01%,0.5%および2.0%濃度のグリチルレチンスレアリル配合製剤をそれぞれ3ヶ月間連用してもらい、色素沈着に対する改善効果を肉眼観察により評価したところ、以下の表のように(∗4)

∗4 表中のGSはグリチルレチン酸ステアリルの略です。

GS濃度
(重量%)
評価(人数)
著しく改善 かなり改善 やや改善 不変 悪化
0 0 1 7 2
0.01 0 0 3 6 1
0.5 0 3 4 3 0
2.0 2 3 3 2 0

グリチルレチンスレアリルを0.5%または2.0%配合した場合は、無配合または0.01%配合した場合と比較して有意な色素沈着改善作用を有することが確認された。

また、試験期間において、試料塗布部位において皮膚に好ましくない反応は観察されず、安全性の高いことが確かめられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献11:2004)、グリチルレチン酸ステアリルにエンドセリン-1産生抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

ただし、医薬部外品(薬用化粧品)の配合上限は0.3%であるため、試験ほど有意な色素沈着抑制作用は期待できず、比較的穏やかな作用であると考えられます。

グリチルリチン酸ジカリウムは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.80 グリチルリチン酸及びその塩類並びにグリチルレチン酸及びその誘導体として合計
育毛剤 0.30
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.30
薬用口唇類 0.20
薬用歯みがき類 0.20
浴用剤 0.20

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

グリチルレチン酸ステアリルの配合製品数と配合量の調査(2002-2003年)

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グリチルレチン酸ステアリルの安全性(刺激性・アレルギー)について

グリチルレチン酸ステアリルの現時点での安全性は、

  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 医薬部外品有効成分
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

まずはグリチルレチン酸の試験データをみてみると、

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 15人のボランティア(男性6人、女性9人、22-41歳)に3%グリチルレチン酸を含む軟膏を閉塞パッチにて3日間パッチ適用し、7日間の休息期間を設けた後に同様にパッチ適用し、パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、すべての被検者において皮膚反応はみられなかったため、試験物質はヒトにおいて皮膚刺激または皮膚感作を生じないと結論づけた(Universita’ Delgi Studi Di Urbino,1990)
  • [ヒト試験] 108人の被検者(男性10人、女性98人)に0.3%グリチルレチン酸を含む保湿化粧品0.15gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も皮膚反応を示さなかった(Hilltop Research Inc,1994)
  • [ヒト試験] 112人の被検者に6%グリチルレチン酸を含む製剤0.2mLを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)をガーゼ閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者も紅斑または浮腫の兆候を示さず、6%グリチルレチン酸は皮膚刺激剤またはアレルギー性接触感作剤ではなかった(Consumer Product Testing Company,2002)
  • [ヒト試験] 56人の被検者(男性5人、女性51人、18-66歳)に0.6%グリチルレチン酸0.05gを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、適用部位において有害反応は検出されなかった(Allergisa Pesquisa Dermato-Cosmetica Ltd,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、濃度にかかわらず、皮膚刺激および皮膚感作の報告がないことが明らかとなっています。

次にグリチルレチン酸ステアリルの試験データをみてみると、

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 89人の被検者に0.5%または1.5%グリチルレチン酸ステアリルを含むオリーブオイルを24時間パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激の兆候はなかった(Uemura,no data)

丸善製薬の安全性データ(文献11:2004)によると、

  • [ヒト試験] 30人の女性被検者を3群に分け、それぞれ0.01%,0.5%および2.0%グリチルレチン酸ステアリルを含むクリームを3ヶ月間連用してもらったところ、いずれの被検者においても試験期間中に好ましくない皮膚反応は観察されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、2.0%以下濃度まで皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、化粧品および医薬部外品配合上限において、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

安全性についての捕捉

グリチルリチン酸およびグリチルレチン酸は、化学構造的にステロイドと類似しており、長期内服(慢性摂取)によってまれに副作用として偽アルドステロン症(∗5)の発症が報告されていますが(文献3:1992;文献4:2006;文献5:2007)、化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)による連用においては、10年以上の使用実績の中でステロイド様作用をはじめ重大な副作用は報告されていないため、安全性に問題はないと考えられます。

∗5 偽アルドステロン症とは、副腎皮質におけるアルデステロン分泌が増えていないにも関わらず、過剰に分泌されているような症状です。

∗∗∗

グリチルレチン酸ステアリルは抗炎症成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2007)「Final Report on the Safety Assessment of Glycyrrhetinic Acid, Potassium Glycyrrhetinate, Disodium Succinoyl Glycyrrhetinate, Glyceryl Glycyrrhetinate, Glycyrrhetinyl Stearate, Stearyl Glycyrrhetinate, Glycyrrhizic Acid, Ammonium Glycyrrhizate, Dipotassium Glycyrrhizate, Disodium Glycyrrhizate, Trisodium Glycyrrhizate, Methyl Glycyrrhizate, and Potassium Glycyrrhizinate1」International Journal of Toxicology(26)(2),79-112.
  2. 矢野 三郎(1958)「GlycyrrhizinのCorticoid作用の本態に関する実験的研究」日本内分泌学会雑誌(34)(8),745-751.
  3. 矢野 三郎(1992)「甘草に関する最近の研究」医療(46)(4),241-245.
  4. 柴田 洋孝(2006)「偽性アルドステロン症」日本内科学会雑誌(95)(4),671-676.
  5. 井本 恭子, 他(2007)「甘草誘発性偽アルドステロン症をきたしたアトピー性皮膚炎の1例」皮膚の科学(6)(2)94-97.
  6. R Finney, et al(1958)「The antiinflammatory activity of glycyrrhetinic acid and derivatives.」The Journal of Pharmacy and Pharmacology(10)(10)613-620.
  7. 豊島 滋, 他(1979)「薬剤開発のための基礎研究」医薬と薬学(2)(1)47-51.
  8. 村本 修敬, 他(1971)「1.5%ステアリルグリチルレチネート軟膏の臨床使用経験」西日本皮膚科(33)(3)288-290.
  9. 丸善製薬株式会社(-)技術資料
  10. 朝田 康夫(2002)「かぶれの種類とその違いは」美容皮膚科学事典,258-261.
  11. 丸善製薬株式会社(2004)「エンドセリン-1mRNA発現抑制剤及びエンドセリン-1産生抑制剤」特開2004-300048.

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