グリチルリチン酸アンモニウムとは…成分効果と毒性を解説

抗アレルギー 抗炎症
グリチルリチン酸アンモニウム
[化粧品成分表示名称]
・グリチルリチン酸アンモニウム

[医薬部外品表示名称]
・グリチルリチン酸モノアンモニウム

マメ科植物カンゾウ(学名:Glycyrrhiza Glabra 英名:licorice)の根から抽出して得られるトリテルペンサポニンの一種であるグリチルリチン酸(glycyrrhizinic acid)(∗1)にアンモニウムを結合したグリチルリチン酸アンモニウム塩であり、分子量840のグリチルリチン酸誘導体です。

∗1 グリチルリチン酸とグリチルリチンは呼び方が違うだけで同様の物質です。

カンゾウの根(生薬名:甘草)は、漢方分野において医療用漢方製剤148処方中109処方(73.6%)に、また一般用漢方製剤294処方中213処方(72.4%)に、甘草単体の効能以外にも他の薬物の効能を高めたり毒性を緩和するといった目的で配合されていることから使用頻度および使用量が最も多い漢方薬として知られており(文献2:2011;文献3:2013)、その主要成分であるグリチルリチン酸には抗炎症、抗アレルギー作用が知られています(文献4:2011;文献5:2017)

また、グリチルリチン酸はトリテルペン配糖体ですが、配糖体が体内に吸収されるためには配糖体からアグリコン(aglycone)(∗2)に変換されることが重要であり、グリチルリチン酸の代表的な薬理作用である抗炎症、抗アレルギー作用については、グリチルリチン酸のアグリコンであるグリチルレチン酸(glycyrrhetinic acid)に存在することが明らかにされています(文献6:1958)

∗2 配糖体とは、糖がグリコシド結合により様々な原子団と結合した化合物の総称であり、グリコシド(glycoside)とも呼ばれますが、配糖体からグルコースなどの糖が外れたものをアグリコンと呼び、アグリコンは体内に吸収されて機能を発揮します。

グリチルリチン酸アンモニウムの化粧品以外の主な用途としては、医薬品分野においてグリチルリチン酸の抗アレルギー作用、抗炎症作用および解毒作用に基づく慢性肝疾患における肝機能異常の改善作用が認められることから肝臓疾患やアレルギー疾患に用いられ(文献7:2016)、食品分野においてはグリチルリチン酸が砂糖の200倍とされる強い甘みを有することから甘味料として醤油、味噌、漬物などの含塩食品に用いられています(文献8:2003)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ハンド&ボディケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、シート&マスク製品などに使用されています。

ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用

ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗3)(文献9:2010;文献10:1968;文献11:1999)

∗3 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献11:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献11:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献11:1999;文献12:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、ヒアルロニダーゼの活性を阻害することはアレルギー性炎症の抑制アプローチにおいて重要であると考えられています。

グリチルリチン酸アンモニウムは、グリチルリチン酸2Kと同様の作用であることから(文献13:2012)、ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー作用が認められていると考えられます。

プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用

プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UVB)曝露による炎症反応のメカニズムとプロスタグランジンE₂について解説します。

以下の紫外線(UVB)曝露による炎症のメカニズム図(一部省略)をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線曝露による炎症反応メカニズム

最初に皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると、転写因子(∗4)の一種であるNF-κB(nuclear factor-kappa B)が過剰に発現することが知られており、このNF-κBの過剰な発現によって、炎症反応に深く関与している炎症性サイトカイン(∗5)であるIL-1α(interleukin-1α:インターロイキン-1α)やTNF-α(tumor necrosis factor-α)が産生・放出されます(文献14:2005;文献15:1994)

∗4 転写因子とは、細胞内のDNAに特異的に結合するタンパク質の一群のことです。

∗5 サイトカインとは、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称であり、標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。炎症性サイトカインとは、サイトカインの中で主に生体内に炎症反応を引き起こすサイトカインのことをいいます。

これらの炎症性サイトカインは、種々のサイトカインを産生させ、さらに真皮の血管内皮細胞に存在する細胞接着因子を誘導し、血中に存在する炎症細胞(白血球)を血管内皮細胞に強固に接着することにより炎症細胞の血管透過性を高め、炎症反応を増強することが知られています(文献15:1994;文献16:1995;文献17:2010)

また、これらの炎症性サイトカインはさらにNF-κBの発現を誘導するため、炎症反応の悪循環が生じ、炎症反応は増幅していくことも明らかにされています(文献14:2005)

同時に、皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると表皮細胞においてプロスタグランジン産生酵素であるCOX-2(cyclooxygenase-2:シクロオキシゲナーゼ-2)の増加によりプロスタグランジンE₂(Prostaglandin E₂:PGE₂)が過剰に産生されることが知られており、プロスタグランジンE₂は真皮の血管拡張に関与することや紅斑を生成することが知られています(文献18:2000;文献19:2013)

このような背景から、プロスタグランジンE₂の産生を抑制することは紅斑や過剰な炎症の抑制において重要であると考えられます。

グリチルリチン酸アンモニウムは、グリチルリチン酸2Kと同様の作用であることから(文献13:2012)、プロスタグランジンE₂産生抑制による抗炎症作用が認められていると考えられます。

グリチルリチン酸モノアンモニウムは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 0.80 グリチルリチン酸及びその塩類並びにグリチルレチン酸及びその誘導体として合計
育毛剤 0.30
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.30
薬用口唇類 0.20
薬用歯みがき類 0.20
浴用剤 0.20

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2002-2003年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

グリチルリチン酸アンモニウムの配合製品数と配合濃度の調査結果(2002-2003年)

グリチルリチン酸アンモニウムの安全性(刺激性・アレルギー)について

グリチルリチン酸アンモニウムの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)
  • 光毒性:ほとんどなし
  • 光感作性:ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

まずはグリチルリチン酸の試験データによると、

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 15人の被検者に3%グリチルリチン酸を含む軟膏を3日間閉塞パッド適用し、パッド除去後に皮膚刺激性を評価し7日間の無処置期間を設けた後に再度3日間閉塞パッド適用した。パッド除去後に皮膚反応を評価したところ、いずれの被検者も皮膚反応はみられず、この試験物質は皮膚刺激および皮膚感作を誘発しないと結論づけられた(Universita’ Delgi Studi Di Urbino,1990)
  • [ヒト試験] 108人の被検者に0.3%グリチルリチン酸を含む保湿剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚反応の兆候は示されなかった(Hilltop Research Inc,1994)
  • [ヒト試験] 106人の被検者に6%グリチルリチン酸を含むグリセリン製剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)をガーゼ閉塞パッチにて実施したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激および接触感作反応の兆候はみられなかった(Consumer Product Testing Company,2002)
  • [ヒト試験] 56人の被検者の背中に0.6%グリチルリチン酸を含む製剤を48時間パッチ適用し、パッチ除去30分および24時間後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても有害な皮膚反応はみられなかった(Allergisa Pesquisa Dermato-Cosmetica Ltd,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激および皮膚感作の報告がないことが明らかとなっています。

一方でグリチルリチン酸アンモニウムの試験データはみあたりませんが、医薬品にも用いられており、また医薬部外品原料規格2021に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

光毒性および光感作性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2007)によると、

  • [ヒト試験] 21人の女性ボランティアに5%グリチルリチン酸アンモニウム水溶液を対象に紫外線照射をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施した。各試料の48時間パッチ適用後に15cmの距離で3分間ブラックライトを照射し、さらに48時間後に皮膚反応を評価したところ、ブラックライト照射前後において皮膚反応は観察されなかった(Yamamoto,1976)
  • [ヒト試験] 21人の女性ボランティアに5%グリチルリチン酸アンモニウム水溶液を対象に紫外線照射をともなうHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施した。各試料の48時間パッチ適用後に15cmの距離で3分間ブラックライトを照射し、さらに48時間後に皮膚反応を評価したところ、ブラックライト照射前後において光毒性の兆候は観察されなかった(Yamamoto,1976)
  • [ヒト試験] (Yamamoto,1976)の試験データを確認するために、グリチルリチン酸アンモニウムを対象に同様の光毒性および光感作試験を実施したところ、光毒性および光感作性の兆候は観察されなかった(St.Marianna University,1995)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して光毒性および光感作性なしと報告されているため、光毒性および光感作性はほとんどないと考えられます。

安全性についての補足

グリチルリチン酸およびグリチルレチン酸は、化学構造的にステロイドと類似しており、長期内服(慢性摂取)によってまれに副作用として偽アルドステロン症(∗6)の発症が報告されていますが(文献20:1992;文献21:2006;文献22:2007)、化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)による連続的な外用(連用)においては、20年以上の使用実績の中でステロイド様作用をはじめ重大な副作用は報告されていないため、安全性に問題はないと考えられます。

∗6 偽アルドステロン症とは、副腎皮質におけるアルデステロン分泌が増えていないにも関わらず、過剰に分泌されているような症状です。

∗∗∗

グリチルリチン酸アンモニウムは抗アレルギー・抗炎症成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗アレルギー・抗炎症成分

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参考文献:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2007)「Final Report on the Safety Assessment of Glycyrrhetinic Acid, Potassium Glycyrrhetinate, Disodium Succinoyl Glycyrrhetinate, Glyceryl Glycyrrhetinate, Glycyrrhetinyl Stearate, Stearyl Glycyrrhetinate, Glycyrrhizic Acid, Ammonium Glycyrrhizate, Dipotassium Glycyrrhizate, Disodium Glycyrrhizate, Trisodium Glycyrrhizate, Methyl Glycyrrhizate, and Potassium Glycyrrhizinate1」International Journal of Toxicology(26)(2_Suppl),79-112.
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