クマザサ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗アレルギー
クマザサ葉エキス
[化粧品成分表示名]
・クマザサ葉エキス

[医薬部外品表示名]
・クマザサエキス

イネ科植物クマザサ(学名:Sasa veitchii 英名:Kuma bamboo grass)の葉からエタノール、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

クマザサ(隈笹)は日本の京都を原産とし、寺院などで栽培されており、また多くの変種が北日本の日本海側の山地を中心に分布しています(文献1:2011)

クマザサ葉エキスは天然成分であることから、地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
糖質 多糖 バンフォリン、α-グルカン など
その他 クロロフィル
フェニルプロパノイド リグニン
ビタミン アスコルビン酸、チアミン、ビタミンK など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献2:2012)

クマザサの葉の化粧品以外の主な用途としては、ササの葉に含まれる安息香酸の殺菌・防腐作用の関係からササの葉に包むと食べ物が長持ちするといわれており、古くから「笹だんご」や「ちまき」など食べ物を包むのに利用されてきたことが知られています(文献1:2011)

また、現在では日本においても茶として広く飲用されています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア製品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ製品、シート&マスク製品、洗顔料、クレンジング製品、ボディソープ製品などに使用されています。

抗アレルギー作用

抗アレルギー作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるアレルギーの種類およびⅠ型アレルギー性皮膚炎のメカニズムについて解説します。

皮膚におけるアレルギー反応は、

種類 名称 抗体 抗原 皮膚反応 考えられる主な疾患
Ⅰ型 即時型
アナフィラキシー型
IgE 化粧品、薬剤、洗剤、ダニ、カビ、ハウスダスト、金属、花粉、ほか 15-20分で最大の発赤と膨疹 アナフィラキシーショック、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、ほか
Ⅳ型 遅延型
細胞性免疫
感作T細胞 細菌、真菌、自己抗原 24-72時間で最大の紅斑と硬結 アレルギー性接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、ほか

主にこの2種類に分類されています(∗1)(文献3:2010;文献4:1968;文献5:1999)

∗1 アレルギーの分類としてはⅠ型-Ⅳ型まで4種類が存在し、Ⅰ型-Ⅲ型までの3種類が即時型に分類されていますが、皮膚に関連するものはⅠ型とⅣ型であることから、ここではⅠ型とⅣ型のみで構成しています。

Ⅰ型アレルギーは、即時型アレルギーまたはアナフィラキシー型とも呼ばれ、皮膚反応としては15-20分で最大に達する発赤・膨疹を特徴とする即時型皮膚反応を示しますが、このⅠ型アレルギー性炎症反応が起こるメカニズムは、以下のアレルギー性皮膚炎のメカニズム図をみてもらうとわかるように、

Ⅰ型アレルギー性皮膚炎のメカニズム

まず、アレルギーを起こす原因物質(抗原)が皮膚や粘膜から体内に侵入すると、抗原提示細胞(ランゲルハンス細胞や真皮樹状細胞)がその抗原の一部を自らの細胞表面に提示し、次にヘルパーT細胞の一種であるTh2細胞が抗原提示細胞の提示した抗原情報を認識し、抗原と結合して抗炎症性サイトカインの一種であるIL-4(Interleukin-4)を分泌します(文献5:1999)

次に、Th2細胞から分泌されたIL-4によりB細胞が刺激を受けIgE抗体を産生し、このIgE抗体が肥満細胞の表面にある受容体に結合することによりIgE抗体と抗原が反応し、肥満細胞に貯蔵されていたケミカルメディエーターであるヒスタミンが放出(脱顆粒)され、同時に細胞膜からはアラキドン酸が遊離し、ケミカルメディエーターであるロイコトリエンやプロスタグランジンに代謝されます(文献5:1999)

そして、放出されたヒスタミンはヒアルロニダーゼを活性化し、アラキドン酸から代謝されたロイコトリエンやプロスタグランジンとともに血管透過性を亢進させて浮腫を起こし、好酸球など炎症細胞の遊走を誘導し、炎症を引き起こします(文献5:1999;文献6:2009)

このような背景から、アレルギー性皮膚炎や肌荒れなどバリア機能が低下している場合に、アレルゲンの曝露からⅠ型炎症までのプロセスにおけるいずれかのポイントにアプローチすることは、アレルギー性炎症の抑制において重要であると考えられています。

2003年に鳳凰堂によって報告されたクマザサ葉エキスのアトピー性皮膚炎に対する影響検証によると、

アトピー性皮膚炎を有する10名の患者(9-83歳)に各乾燥固形分濃度50%,6%,2%および0.5%クマザサ葉エキス配合クリームを患者によって15-180日の期間塗布してもらい、試用期間終了後に改善効果を評価したところ、50%および0.5%濃度クマザサ葉エキス配合クリームは試用期間に関係なくいずれの患者においても効果を示さなかった。

一方で、固形分濃度2%クマザサ葉エキス配合クリームの塗布は、試用期間に関係なく10名のうち9名に症状の改善効果がみられた。

固形分濃度6%クマザサ葉エキス配合クリームは、5名のうち3名にかなりの症状改善効果がみられたが、残りの2名は皮膚にヒリヒリ感を示した。

このような試験結果が明らかにされており(文献7:2003)、固形分濃度2%-6%のクマザサ葉エキスに抗アレルギー作用が認められています。

ただし、一般的な化粧品においてはクマザサ葉エキスの配合量は1%濃度未満であり、その場合は他の抗アレルギー成分と併用することによる相乗的な抗アレルギー効果を目的に配合されている可能性が考えられます。

クマザサエキスは、医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 上限なし
育毛剤 10
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 10
薬用口唇類 10
薬用歯みがき類 10
浴用剤 10

クマザサ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

クマザサ葉エキスの現時点での安全性は、

  • 外原規2021規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2021に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし(データなし)
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

医薬部外品原料規格2021に収載されており、10年以上の使用実績がある中で重大な皮膚刺激および皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

∗∗∗

クマザサ葉エキスは抗アレルギー成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗アレルギー成分

∗∗∗

参考文献:

  1. 鈴木 洋(2011)「隈笹(くまざさ)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,111.
  2. 三浦 絢子, 他(2012)「クマザサ熱水抽出物に含まれる糖質」応用糖質科学:日本応用糖質科学会誌(2)(3),B47.
  3. 厚生労働省(2010)「アレルギー総論」リウマチ・アレルギー相談員養成研修会テキスト5-14.
  4. R.R.A. Coombs, et al(1968)「Classification of Allergic Reactions Responsible for Clinical Hypersensitivity and Disease」Clinical Aspects of Immunology Second Edition,575-596.
  5. 西部 幸修, 他(1999)「植物抽出物の抗アレルギー作用」Fragrance Journal臨時増刊(16),109-115.
  6. 椛島 健治(2009)「皮膚のスーパー免疫」美容皮膚科学 改定2版,46-51.
  7. 株式会社鳳凰堂(2003)「止痒性組成物及び創傷治癒促進組成物」再表2002-007745.

TOPへ