カンゾウ根エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 美白成分 抗菌成分
カンゾウ根エキス
[化粧品成分表示名称]
・カンゾウ根エキス

[医薬部外品表示名称]
・カンゾウ抽出末

[慣用名]
・甘草エキス

マメ科植物カンゾウ(学名:Glycyrrhiza Glabra 英名:リコリス)の根から抽出して得られるエキスです。

カンゾウ根エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • グリチルリチン酸
  • グラブリジン
  • リキリチン
  • イソリキリチン
  • リコリチジン
  • リキリトシド
  • トリテルペノイド
  • フラボノイド

などで構成されています(文献2:2006;文献8:2006)

カンゾウ(甘草)は、その名が示すとおり砂糖の50倍の甘さをもち、古くから伝統医学で用いられてきました。

ギリシアの自然科学者のテオフラストスは甘草の根を喘息や乾いた咳、または肺の病いに用いたことを記録しており、中国ではのどの痛みや喘息、胃や十二指腸の潰瘍に用い、また漢方の処方では生薬全体の調和の目的で汎用されています(文献3:2016)

薬理作用としては、消炎作用、去痰作用、粘膜の刺激を緩和する働きが報告されており、さらに近年では抗ウィルス作用、免疫賦活作用が確認されています(文献3:2016)

カンゾウの作用の中心はトリテルペン系サポニンのグリチルリチンと考えられていますが、他の成分が協働して生物学的な活性を高めていると考えられています。

化粧品に配合される場合は、

これらの作用があるとされており、スキンケア化粧品、ヘアケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、日焼け止め製品、洗顔料、パックなど様々な製品に使用されます(文献2:2006;文献8:2006)

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

カンゾウ根エキスの色素沈着抑制作用は主にグラブリジンによるものであり、作用機序はチロシナーゼ活性阻害によるものですが、先に色素沈着(黒化メラニン)の仕組みを説明しておくと、以下の図のように、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びた皮膚はまず紫外線情報を基底層のメラノサイトに届け、紫外線情報がメラノサイトに届くと、チロシナーゼ酵素が活性化し、メラノサイト内に存在するチロシンというアミノ酸と結合することでドーパに変化し、またドーパの段階でも活性化したチロシナーゼと結合することでドーパキノンに変化し、段階を経て黒化メラニンへと合成されます。

カンゾウ根エキスのチロシナーゼ活性阻害作用については、1997年にマッシュルームチロシナーゼを用いたカンゾウ根エキス量によるチロシナーゼ抑制率比較検証によると、

マッシュルームチロシナーゼを用いてカンゾウ根エキス0,3.3および333μg/mLによるチロシナーゼ活性阻害を検証したところ、阻害率は3.3および333μg/mLについて25%および68%であった。

この結果からカンゾウ根エキスは他の99種類の植物エキスと比較して高いチロシナーゼ活性阻害性を有していることを明らかにした(Lee et al.,1997)

このように報告されており(文献1:2008)、高いチロシナーゼ活性阻害作用によって色素沈着を抑制することが明らかになっています。

複合植物エキスとしてのカンゾウ根エキス

プランテージ<ホワイト>という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 紫外線を浴びることで産生されるメラニン生成を加速させる紫外線情報伝達物質であるエンドセリン-1の抑制
  2. メラニンの生合成に必須の酵素であるチロシナーゼの阻害
  3. できてしまったメラニンの排出を促進し、肌へのメラニン蓄積を防ぐためのターンオーバーの促進

とされており、それぞれ美白ポイントの違う植物エキスの相乗効果によってメラニン産生抑制およびくすみや色素沈着を多角的に予防するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はプランテージ<ホワイト>であると推測することができます(文献9:2006)

プランテージ<ホワイト>EXという複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 紫外線を浴びることで産生されるメラニン生成を加速させる紫外線情報伝達物質であるエンドセリン-1の抑制
  2. メラニンの生合成に必須の酵素であるチロシナーゼの阻害およびメラニン産生抑制
  3. できてしまったメラニンの転送を抑制
  4. できてしまったメラニンの排出を促進し、肌へのメラニン蓄積を防ぐためのターンオーバーの促進

とされており、それぞれ美白ポイントの違う植物エキスの相乗効果によってメラニン産生抑制およびくすみや色素沈着を多角的に予防するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はプランテージ<ホワイト>EXであると推測することができます(文献9:2006)

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2007-2008年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

カンゾウ根エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2007-2008年)

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カンゾウ根エキスの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

カンゾウ根エキスの現時点での安全性は、医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載されている漢方生薬であり、また外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006にも収載されており、皮膚刺激性はほとんどなく、眼刺激性は非刺激性または非常にわずかな眼刺激性が起こる可能性があるものの、皮膚感作性(アレルギー性)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

ただし、主観的に軽度のスティンギング(チクチクする感覚)および燃焼感覚を感じたり、またはごくまれに接触性皮膚炎反応が起こる可能性があるため、注意が必要です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Rhizome/root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Leaf Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Juice, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Powder, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Water, Glycyrrhiza Inflata Root Extract, and Glycyrrhiza Uralensis (Licorice) Root Extract」(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 9人の被検者の背中にカンゾウ根エキス(~900ppm)を含む試験物質0.02mLを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去30分後に皮膚反応を評価したところ、3人の被検者で非常にわずかな紅斑が観察された(Laboratoires Phybiotex,1996)
  • [ヒト試験] 106人の日本人被検者の健康な皮膚に0.0001%カンゾウ根エキスを含む16種類の製品の反復傷害パッチ試験(HRIPT)を実施した。製品は誘導期間において合計9回にわたって48~72時間閉塞パッチ適用し、次いで12~24日の無処置期間の後に未処置部位に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ適用48および96時間後に皮膚反応を評価したところ、1製品に対して1人の被検者が接触過敏症の兆候を示したが、それ以外の被検者で刺激または感作の兆候はなかった。接触過敏症の兆候を示した被検者に再度試験したところ、やはり遅延過敏症を示した(Thomas J. Stephens & Associates Inc,2004a)
  • [ヒト試験] 敏感な皮膚の自覚がある30人の日本人女性被検者と敏感な皮膚の自覚がある28人の白人、ベトナム、韓国、中国など様々な人種の被検者に0.0001%カンゾウ根エキスを含む3つの製品の安全性試験を実施した。1つの製品を1日目から14日目まで夜間の通常のスキンケアに加え顔全体に塗布し、15日目から28日目にかけて様々な人種の被検者に第2の製品を適用し、日本の被検者に第3の製品を適用し、臨床的な皮膚評価を14日目および28日目に行ったところ、客観的または主観的な皮膚刺激スコアの増加は認められなかった(Thomas J. Stephens & Associates Inc,2004b)
  • [ヒト試験] 68人の日本人女性被検者に0.0001%カンゾウ根エキスを含む3つの製品の安全性試験を実施した。1日目から4日目まで被検者は第1の製品を片眼領域に1日2回適用し、他方の眼領域には第2の製品を1日1回適用した。5日目から18日目まで、被検者は第1の製品を顔全体に毎日2回塗布した。19日目から32日目まで、被検者は第1の製品および第3の製品を午前および夕方に顔全体に塗布した。臨床的皮膚評価を2,3,4,18および32日目に実施したところ、眼領域における眼科検査では臨床的に有意であるとは判断されなかったが非常に軽度の眼瞼の充血が示された。1つの製品は2週間で68人のうち28人(41%)の被検者で顔面に刺痛および燃焼感覚の増加が報告された。また追加した製品を塗布した場合に5人(7%)の被検者が軽度の刺痛および燃焼感覚を報告した。製品のひとつが通常使用された場合、顔に軽度の主観的感覚を生じさせる可能性が高いと結論付けられた。また敏感な皮膚またはアトピー性皮膚炎を有する場合は中等から重度の感覚刺激を経験する可能性があると考えられた。客観的な炎症は報告されなかった(Thomas J. Stephens & Associates Inc,2004c)
  • [ヒト試験] 36人の女性被検者(敏感肌15人、色素沈着過多14人、肝斑7人)の顔色素領域に0.8%カンゾウ根エキスを含むフェイシャルスポット製剤を塗布し、4,8および12週目に臨床的評価を行ったところ、いずれの観察期間においても紅斑および乾燥はみられず、客観的または主観的な刺激増加の報告もなかった(Stephens & Associates Inc,2005)
  • [ヒト試験] 皮膚疾患のない健康な104人の被検者に0.0001%カンゾウ根エキスを含む製品20μLを誘導期間において週3回2週間にわたって適用し、各パッチ除去後次のパッチが適用されるまでに試験部位を評価した。次いで1~15日の休息期間の後に試験部位に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去24時間後に皮膚反応を評価したところ、刺激性または感作性の兆候はないと結論づけた(TKL Research Inc,2005a)
  • [ヒト試験] 106人の被検者に0.8%カンゾウ根エキスおよび他の5種類の植物を含むキャリア溶液を誘導期間において週3回3週間にわたって閉塞Finn Chamber適用し、次いで10~15日の休息期間の後にチャレンジパッチを適用した。適用24および48時間後に観察したところ、この製品は刺激性および感作性の兆候はなかった(TKL Research Inc,2005b)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、健常な皮膚および敏感な皮膚で皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどなしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、主観的に軽度のスティンギング(チクチクする感覚)および燃焼感覚を感じたり、またはごくまれに接触性皮膚炎反応が起こる可能性があるため、注意が必要です。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Rhizome/root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Leaf Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Juice, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Powder, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Water, Glycyrrhiza Inflata Root Extract, and Glycyrrhiza Uralensis (Licorice) Root Extract」(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.15%カンゾウ根エキスを含むコーン油0.1mLを点滴し、眼はすすがず、24,48および72時間で観察したところ、試験物質はウサギの眼に非刺激性であり、眼刺激剤であにことが明らかとなった(Consumer Product Testing Co,1994)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢に1%カンゾウ根エキスを含むグリセリン0.1mLを点眼し、3日目に影響が見られない場合7日目まで観察したところ、わずかな涙液流出は1日目に正常に戻り、1時間で観察されたわずかなケモーシスは2日目までに解消され、すべてのウサギにおいて1時間で観察された軽度の角膜混濁は1日目までに完全に解消された。この試験物質はわずかな眼刺激性であると考えられた(Cosmepar Conseil & Experimentation,1997)
  • [in vitro試験] 培養された正常なヒト由来ケラチノサイトからなる角膜モデルを用いて10%カンゾウ根エキス100μLを様々な時間暴露したところ、Draizeスコア0と同等であり、カンゾウ根エキスは非刺激性と評価された(BioInnovation Laboratories Inc,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激性またはわずかな眼刺激性があると報告されているため、眼刺激性は非刺激性またはわずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
カンゾウ根エキス

参考までに化粧品毒性判定事典によると、カンゾウ根エキスは△(∗1)となっており、安全性に問題はないと考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

カンゾウ根エキスは抗炎症成分、美白成分、抗菌成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 美白成分 抗菌成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2008)「Safety Assessment of Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Rhizome/root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Leaf Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Juice, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Powder, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Water, Glycyrrhiza Inflata Root Extract, and Glycyrrhiza Uralensis (Licorice) Root Extract」,<https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR442.pdf> 2018年6月24日アクセス.
  2. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,367.
  3. 林真一郎(2016)「リコリス」メディカルハーブの事典 改定新版,186-187.
  4. ジャパンハーブソサエティー(2018)「リコリス」ハーブのすべてがわかる事典,207.
  5. 原島 広至(2017)「カンゾウ(甘草)」生薬単 改訂第3版,148-149.
  6. 鈴木 洋(2011)「甘草(かんぞう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,82-83.
  7. AHPA(米国ハーブ製品協会), Zoe Gardner, Michael McGuffin, et al.(2016)「Glycyrrhiza spp.」メディカルハーブ安全性ガイドブック 第2版,359-364.
  8. 田村 幸吉(2006)「油溶性甘草エキスとムクロジエキスの抗菌作用」Fregrance Journal(34)(4),53-59.
  9. 川嶋 善仁(2006)「高機能植物コンプレックス(オウゴン,タイソウ,カンゾウフラボノイド)の美白効果」Fregrance Journal(34)(8),69-73.

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