カンゾウ根エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 抗アレルギー 美白成分
カンゾウ根エキス
[化粧品成分表示名称]
・カンゾウ根エキス

[医薬部外品表示名称]
・カンゾウ抽出末

[慣用名]
・甘草エキス

マメ科植物カンゾウ(学名:Glycyrrhiza Glabra 英名:licorice)の根からで抽出して得られる水溶性のエキスです。

同じカンゾウ根エキスの成分として甘草フラボノイドがありますが、双方の違いは、

種類 抽出法 主成分 主な作用・効果
カンゾウ根エキス グリチルリチン酸 抗炎症
甘草フラボノイド 疎水抽出 グラブリジン 色素沈着抑制

このように、抽出法によって抽出される成分が異なることで、作用・効果が異なる点にあります。

化粧品成分表示には、甘草フラボノイドであっても「カンゾウ根エキス」と表示されることがありますが、カンゾウ根エキスと一緒にオウゴン根エキスナツメ果実エキスが併用されている場合は、甘草フラボノイドが配合されていると考えられます。

カンゾウ根エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • トリテルペン配糖体:グリチルリチン(グリチルリチン酸)
  • フラボノイド:リキリチン、イソリキリチン

などで構成されています(文献2:2006;文献4:2017)

カンゾウ(甘草)は、その名が示すとおり砂糖の50倍の甘さをもち、古くから伝統医学で用いられてきました。

ギリシアの自然科学者のテオフラストスは甘草の根を喘息や乾いた咳、または肺の病いに用いたことを記録しており、中国ではのどの痛みや喘息、胃や十二指腸の潰瘍に用い、また漢方の処方では生薬全体の調和の目的で汎用されています(文献3:2016)

薬理作用としては、消炎作用、去痰作用、粘膜の刺激を緩和する働きが報告されており、さらに近年では抗ウィルス作用、免疫賦活作用が確認されています(文献3:2016)

カンゾウの主な作用は、トリテルペン系サポニンのグリチルリチンによるものと考えられていますが、他の成分が協働して生物学的な活性を高めていると考えられています。

化粧品に配合される場合は、

これらの作用があるとされており、スキンケア化粧品、ヘアケア製品、ボディケア製品、ハンドケア製品、日焼け止め製品、洗顔料、パックなど様々な製品に使用されます(文献2:2006;文献10:2002)

ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー・抗炎症作用

ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー・抗炎症作用に関しては、まず前提知識としてアレルギーと、ヒアルロニダーゼおよびヒスタミンの関係について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

ヒアルロン酸は、真皮の中で広く分布するゲル状の高分子多糖体として知られており、規則的に配列したコラーゲンとエラスチンの繊維間を充たし、水分を大量に保持することで、皮膚に弾力性と柔軟性を与えています(文献5:2002)

ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する酵素であり、通常はヒアルロン酸の産生と分解がバランスすることで一定のヒアルロン酸量を保っています。

ただし、皮膚に炎症や刺激が起こるとヒアルロニダーゼが活性化し、ヒアルロン酸の分解が促進されることでヒアルロン酸の質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となるだけでなく、ヒスタミンの放出にも関与し、かゆみや腫れを引き起こします。

ヒスタミンは、以下のⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

Ⅰ型アレルギーが起こるメカニズム

ヒスタミンが放出されると、神経を刺激してかゆみを起こし、また血管の透過性(∗1)を高めるため、血漿成分が血管壁を通して血管外へ出てその周辺の皮膚にたまってむくみができ、その結果かゆみを伴った膨疹がみられるようになるというメカニズムになります。

∗1 透過性とは、通り抜けられる性質のことです。

このような背景から、過剰なヒアルロニダーゼ活性を阻害することは、ヒスタミンの放出を抑制することができ、アレルギー反応にともなうかゆみや痛みを緩和することができるため、アレルギーを有する場合やかゆみを誘発しやすい乾燥肌および敏感肌において重要であると考えられます。

カンゾウ根エキスの主成分はグリチルリチン酸であり、グリチルリチン酸は抗炎症作用や抗ウィルス作用などの生理活性を有することが知られており、また皮膚においても古くからヒアルロニダーゼ活性阻害による抗アレルギー・抗炎症作用が認められています(文献6:1990;文献7:1980)

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用

SCF結合阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムとSCFおよびc-kitレセプターについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユーメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

SCF(Stem Cell Factor)は肝細胞増殖因子ですが、メラニン生合成のメカニズムでは情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)のひとつとして知られており、メラノサイトに存在するSCFの受容体であるc-kitレセプターに輸送・結合されることにより、肥満細胞が遊走、分化・増殖し、アトピー性皮膚炎が引き起こされたり、メラニン合成が活性化することが明らかになっています(文献9:1996)

2002年に花王によって公開された技術情報によると、

細胞表面上のc-kitレセプターに対するSCFの結合を特異的に阻害する天然物を探索したところ、カンゾウ(水抽出)、アスパラサスリネアリス、アセンヤク、ナギイカダシコンエンメイソウトウガラシウコン、コンフリー、ノバラユリチャチョウジ、ツバキの抽出物にSCF結合阻害活性があることを見出した。

そこでヒト培養メラノサイトを用いたin vitro試験において各植物抽出物を1%濃度で添加し、SCF/c-kitの特異的結合量を測定したところ、以下の表のように、

植物 SCF結合阻害率(%)
カンゾウ 71.0
アスパラサスリネアリス 40.4
アセンヤク 34.1
ナギイカダ 31.5
シコン 29.1
エンメイソウ 27.4
トウガラシ 25.0
ウコン 20.2
コンフリー 17.3
ノバラ 17.0
ユリ 11.0
チャ 63.0
チョウジ 49.9
ツバキ 45.0

カンゾウ抽出物は、c-kitレセプターに対するSCFの結合阻害活性を有することが認められた。

また配合量は通常0.00001%~1%が好ましく、とくに0.0001%~0.1%が好ましい。

このような検証結果が明らかにされており(文献8:2002)、カンゾウ根エキスにSCF結合阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

カンゾウ抽出末(カンゾウ根エキス)は医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤
育毛剤 0.30
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 0.30
薬用口唇類 0.10
薬用歯みがき類 0.10
浴用剤 0.20

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2007-2008年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

カンゾウ根エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2007-2008年)

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カンゾウ根エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

カンゾウ根エキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚刺激性(皮膚炎および敏感な皮膚を有する場合):ほとんどなし
  • スティンギング:まれに軽度
  • 眼刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 9人の被検者の背中にカンゾウ根エキス(~900ppm)を含む試験物質0.02mLを48時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去30分後に皮膚反応を評価したところ、3人の被検者で非常にわずかな紅斑が観察された(Laboratoires Phybiotex,1996)
  • [ヒト試験] 106人の日本人被検者の健康な皮膚に0.0001%カンゾウ根エキスを含む16種類の製品の反復傷害パッチ試験(HRIPT)を実施した。製品は誘導期間において合計9回にわたって48~72時間閉塞パッチ適用し、次いで12~24日の無処置期間の後に未処置部位に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ適用48および96時間後に皮膚反応を評価したところ、1製品に対して1人の被検者が接触過敏症の兆候を示したが、それ以外の被検者で刺激または感作の兆候はなかった。接触過敏症の兆候を示した被検者に再度試験したところ、やはり遅延過敏症を示した(Thomas J. Stephens & Associates Inc,2004)
  • [ヒト試験] 68人の日本人女性被検者に0.0001%カンゾウ根エキスを含む3つの製品の安全性試験を実施した。1日目から4日目まで被検者は第1の製品を片眼領域に1日2回適用し、他方の眼領域には第2の製品を1日1回適用した。5日目から18日目まで、被検者は第1の製品を顔全体に毎日2回塗布した。19日目から32日目まで、被検者は第1の製品および第3の製品を午前および夕方に顔全体に塗布した。臨床的皮膚評価を2,3,4,18および32日目に実施したところ、眼領域における眼科検査では臨床的に有意であるとは判断されなかったが非常に軽度の眼瞼の充血が示された。1つの製品は2週間で68人のうち28人(41%)の被検者で顔面に刺痛および燃焼感覚の増加が報告された。また追加した製品を塗布した場合に5人(7%)の被検者が軽度の刺痛および燃焼感覚を報告した。製品のひとつが通常使用された場合、顔に軽度の主観的感覚を生じさせる可能性が高いと結論付けられた。また敏感な皮膚またはアトピー性皮膚炎を有する場合は中等から重度の感覚刺激を経験する可能性があると考えられた。客観的な炎症は報告されなかった(Thomas J. Stephens & Associates Inc,2004)
  • [ヒト試験] 皮膚疾患のない健康な104人の被検者に0.0001%カンゾウ根エキスを含む製品20μLを誘導期間において週3回2週間にわたって適用し、各パッチ除去後次のパッチが適用されるまでに試験部位を評価した。次いで1~15日の休息期間の後に試験部位に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去24時間後に皮膚反応を評価したところ、刺激性または感作性の兆候はないと結論づけた(TKL Research Inc,2005)
  • [ヒト試験] 106人の被検者に0.8%カンゾウ根エキスおよび他の5種類の植物を含むキャリア溶液を誘導期間において週3回3週間にわたって閉塞Finn Chamber適用し、次いで10~15日の休息期間の後にチャレンジパッチを適用した。適用24および48時間後に観察したところ、この製品は刺激性および感作性の兆候はなかった(TKL Research Inc,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、健常な皮膚および敏感な皮膚で皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどなしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

主観的な軽度のスティンギング(チクチクする感覚)および燃焼感覚の報告がありますが、カンゾウ根エキスを含む市販製品の安全性試験であり、原因がカンゾウ根エキスによるものなのか不明であるため、原因成分の特定が必要であると考えられます。

– 皮膚炎および敏感な皮膚を有する場合 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [ヒト試験] 敏感な皮膚の自覚がある30人の日本人女性被検者および28人の白人、ベトナム、韓国、中国など様々な人種の被検者に0.0001%カンゾウ根エキスを含む3つの製品の安全性試験を実施した。1つの製品を1日目から14日目まで夜間の通常のスキンケアに加え顔全体に塗布し、15日目から28日目にかけて様々な人種の被検者に第2の製品を適用し、日本の被検者に第3の製品を適用し、臨床的な皮膚評価を14日目および28日目に行ったところ、客観的または主観的な皮膚刺激スコアの増加は認められなかった(Thomas J. Stephens & Associates Inc,2004b)
  • [ヒト試験] 36人の女性被検者(敏感肌15人、色素沈着過多14人、肝斑7人)の顔色素領域に0.8%カンゾウ根エキスを含むフェイシャルスポット製剤を塗布し、4,8および12週目に臨床的評価を行ったところ、いずれの観察期間においても紅斑および乾燥はみられず、客観的または主観的な刺激増加の報告もなかった(Stephens & Associates Inc,2005)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚炎および敏感な皮膚を有する場合において、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2008)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.15%カンゾウ根エキスを含むコーン油0.1mLを点滴し、眼はすすがず、24,48および72時間で観察したところ、試験物質はウサギの眼に非刺激性であり、眼刺激剤であにことが明らかとなった(Consumer Product Testing Co,1994)
  • [動物試験] 3匹のウサギの片眼の結膜嚢に1%カンゾウ根エキスを含むグリセリン0.1mLを点眼し、3日目に影響が見られない場合7日目まで観察したところ、わずかな涙液流出は1日目に正常に戻り、1時間で観察されたわずかなケモーシスは2日目までに解消され、すべてのウサギにおいて1時間で観察された軽度の角膜混濁は1日目までに完全に解消された。この試験物質はわずかな眼刺激性であると考えられた(Cosmepar Conseil & Experimentation,1997)
  • [in vitro試験] 培養された正常なヒト由来ケラチノサイトからなる角膜モデルを用いて10%カンゾウ根エキス100μLを様々な時間暴露したところ、Draizeスコア0と同等であり、カンゾウ根エキスは非刺激性と評価された(BioInnovation Laboratories Inc,2004)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、非刺激性またはわずかな眼刺激性があると報告されているため、眼刺激性は非刺激性またはわずかな眼刺激性が起こる可能性があると考えられます。

安全性についての捕捉

グリチルリチン酸およびグリチルレチン酸は、化学構造的にステロイドと類似しており、長期内服(慢性摂取)によってまれに副作用として偽アルドステロン症(∗2)の発症が報告されていますが(文献10:1992;文献11:2006;文献12:2007)、化粧品および医薬部外品(薬用化粧品)による連用においては、10年以上の使用実績の中でステロイド様作用をはじめ重大な副作用は報告されていないため、安全性に問題はないと考えられます。

∗2 偽アルドステロン症とは、副腎皮質におけるアルデステロン分泌が増えていないにも関わらず、過剰に分泌されているような症状です。

∗∗∗

カンゾウ根エキスは抗炎症成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2008)「Safety Assessment of Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Rhizome/root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Leaf Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Extract, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Juice, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Powder, Glycyrrhiza Glabra (Licorice) Root Water, Glycyrrhiza Inflata Root Extract, and Glycyrrhiza Uralensis (Licorice) Root Extract」Final Report.
  2. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,367.
  3. 林真一郎(2016)「リコリス」メディカルハーブの事典 改定新版,186-187.
  4. 原島 広至(2017)「カンゾウ(甘草)」生薬単 改訂第3版,148-149.
  5. 朝田 康夫(2002)「真皮の変性と加齢の関係は」美容皮膚科学事典,132-133.
  6. 田村 健夫, 他(1990)「動・植物抽出成分」香粧品科学 理論と実際 第4版,255-263.
  7. H Fujita, et al(1980)「Antiinflammatory effect of glycyrrhizinic acid. Effects of glycyrrhizinic acid against carrageenininduced edema, UV-erythema and skin reaction sensitised with DNCB」Pharmacometrics(19),481-484.
  8. 花王株式会社(2002)「SCF結合阻害剤」特開2002-302451.
  9. N W Lukacs,et al(1996)「Stem cell factor (c-kit ligand) influences eosinophil recruitment and histamine levels in allergic airway inflammation.」The Journal of Immunology(156)(10),3945-3951.
  10. 矢野 三郎(1992)「甘草に関する最近の研究」医療(46)(4),241-245.
  11. 柴田 洋孝(2006)「偽性アルドステロン症」日本内科学会雑誌(95)(4),671-676.
  12. 井本 恭子, 他(2007)「甘草誘発性偽アルドステロン症をきたしたアトピー性皮膚炎の1例」皮膚の科学(6)(2)94-97.

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