カワラヨモギ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 色素沈着抑制
カワラヨモギ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・カワラヨモギ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・カワラヨモギエキス

キク科植物カワラヨモギ(学名:Artemisia capillaris 英名:capillary artemisia)の頭花からエタノールBG、またはこれらの混液で抽出して得られる抽出物植物エキスです。

カワラヨモギ(河原蓬)は、朝鮮半島、中国などに、日本においては主に長野県、徳島県などの河原や海岸に自生しています(文献1:2011;文献2:2013)

カワラヨモギ花エキスは天然成分であることから、国・地域、時期、抽出方法によって成分組成に差異があると推察されますが、その成分組成は主に、

分類 成分名称
ポリケタイド クロモン カピラリシン
精油 カピリン、カピレン
フラボノイド フラボン シルシリネオール など

これらの成分で構成されていることが報告されています(文献1:2011;文献2:2013;文献3:2011)

カワラヨモギの頭花(生薬名:茵陳蒿)の化粧品以外の主な用途としては、漢方分野においてすべての黄疸に対して有効であることから黄疸症状に用いられます(文献4:2016)

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、シート&マスク製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、洗顔石鹸、シャンプー製品、トリートメント製品、クレンジング製品などに使用されています。

IL-1α産生阻害による抗炎症作用

IL-1α産生阻害による抗炎症作用に関しては、まず前提知識として紫外線(UVB)曝露による炎症反応のメカニズムについて解説します。

以下の紫外線(UVB)曝露による炎症のメカニズム図(一部省略)をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線曝露による炎症反応メカニズム

最初に皮膚が紫外線(UVB)に曝露されると、転写因子(∗1)の一種であるNF-κB(nuclear factor-kappa B)が過剰に発現することが知られており、このNF-κBの過剰な発現によって、炎症反応に深く関与している炎症性サイトカイン(∗2)であるIL-1α(interleukin-1α:インターロイキン-1α)やTNF-α(tumor necrosis factor-α)が産生・放出されます(文献5:2005;文献6:1994)

∗1 転写因子とは、細胞内のDNAに特異的に結合するタンパク質の一群のことです。

∗2 サイトカインとは、細胞間相互作用に関与する生理活性物質の総称であり、標的細胞にシグナルを伝達し、細胞の増殖、分化、細胞死、機能発現など多様な細胞応答を引き起こすことで知られています。炎症性サイトカインとは、サイトカインの中で主に生体内に炎症反応を引き起こすサイトカインのことをいいます。

これらの炎症性サイトカインは、種々のサイトカインを産生させ、さらに真皮の血管内皮細胞に存在する細胞接着因子を誘導し、血中に存在する炎症細胞(白血球)を血管内皮細胞に強固に接着することにより炎症細胞の血管透過性を高め、炎症反応を増強することが知られています(文献6:1994;文献7:1995;文献8:2010)

また、これらの炎症性サイトカインはさらにNF-κBの発現を誘導するため、炎症反応の悪循環が生じ、炎症反応は増幅していくことも明らかにされています(文献5:2005)

このような背景から、炎症性サイトカインの過剰な産生を抑制することは、過剰な炎症の抑制において重要であると考えられます。

2006年に一丸ファルコスによって報告されたカワラヨモギ花エキスのIL-1αおよび皮膚に対する影響検証によると、

in vitro試験において正常ヒト新生児表皮角化細胞を播種した培養液にボタン50%エタノール溶液(固形分濃度1.4%)、カワラヨモギ花30%BG溶液(固形分濃度1.1%)を50μL/mL濃度で添加、ブランクとして50%BG溶液を添加し、UVBを50mJ照射し培養・処理後にIL-1αの量を定量したところ、以下のグラフのように、

各植物エキスのIL-1α産生阻害作用

カワラヨモギ花エキスは、有意なIL-1α産生抑制効果がみられた。

次に、シミ、そばかす、色黒で悩む10人の被検者(30-60歳)に5%カワラヨモギ花エキス配合乳液を1日2回(朝夕)3ヶ月間にわたって塗布してもらった。

3ヶ月後にシミ・ソバカスおよび皮膚明度の改善効果を「有効:シミ・ソバカスの軽減や皮膚明度が向上した」「やや有効:シミ・ソバカスがやや軽減し、皮膚明度がやや向上した」「無効:使用前と変化なし」の3段階で評価したところ、以下の表のように、

試料 被検者数 有効 やや有効 無効
カワラヨモギ花エキス配合乳液 10 6 3 1
乳液のみ(比較対照) 10 0 1 9

5%カワラヨモギ花エキス配合乳液塗布群は、未配合乳液塗布群と比較して色素沈着の抑制および皮膚明度の向上が確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献9:2006)、カワラヨモギ花エキスにIL-1α産生阻害による抗炎症作用が認められています。

ヒト使用試験データに関しては、IL-1αは炎症に関与するだけでなく、表皮角化細胞(ケラチノサイト)自身を刺激することでケラチノサイトからのメラノサイト活性化因子(ET-1やPGE₂)の産生を促進し、メラノサイト活性化因子がメラノサイトを刺激してメラノサイト内でのメラニン生成が促進されるといったメカニズムから、色素沈着の抑制および皮膚明度の向上をIL-1α産生阻害の指標としていると考えられます。

ただし、IL-1αの直接的な作用は炎症であることから、ここではIL-1α産生阻害作用を抗炎症作用に分類しています。

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用

チロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン色素生合成のメカニズムおよびチロシナーゼについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

メラニン生合成のメカニズム図

皮膚が紫外線に曝露されると、細胞や組織内では様々な活性酸素が発生するとともに、様々なメラノサイト活性化因子(情報伝達物質)がケラチノサイトから分泌され、これらが直接またはメラノサイト側で発現するメラノサイト活性化因子受容体を介して、メラノサイトの増殖やメラノサイトでのメラニン生合成を促進させることが知られています(文献10:2002;文献11:2016;文献12:2019)

また、メラノサイト内でのメラニン生合成は、メラニンを貯蔵する細胞小器官であるメラノソームで行われ、生合成経路としてはアミノ酸の一種かつ出発物質であるチロシンに酸化酵素であるチロシナーゼが働きかけることでドーパに変換され、さらにドーパにも働きかけることでドーパキノンへと変換されます(文献10:2002;文献12:2019)

ドーパキノンは、システイン存在下の経路では黄色-赤色のフェオメラニン(pheomelanin)へ、それ以外はチロシナーゼ関連タンパク質2(tyrosinaserelated protein-2:TRP-2)やチロシナーゼ関連タンパク質1(tyrosinaserelated protein-1:TRP-1)の働きかけにより茶褐色-黒色のユウメラニン(eumelanin)へと変換(酸化・重合)されることが明らかにされています(文献10:2002;文献12:2019)

そして、毎日生成されるメラニン色素は、メラノソーム内で増えていき、一定量に達すると樹枝状に伸びているデンドライト(メラノサイトの突起)を通して、周辺の表皮細胞に送り込まれ、ターンオーバーとともに皮膚表面に押し上げられ、最終的には角片とともに垢となって落屑(排泄)されるというサイクルを繰り返します(文献10:2002)

正常な皮膚においてはメラニンの排泄と生成のバランスが保持される一方で、紫外線の曝露、加齢、ホルモンバランスの乱れ、皮膚の炎症などによりメラニン色素の生成と排泄の代謝サイクルが崩れると、その結果としてメラニン色素が過剰に表皮内に蓄積されてしまい、色素沈着が起こることが知られています(文献10:2002)

このような背景から、チロシナーゼの活性を阻害することは色素沈着の抑制において重要なアプローチであると考えられています。

1992年に丸善製薬によって報告されたカワラヨモギ花エキスのチロシナーゼ活性およびヒト皮膚への影響検証によると、

in vitro試験において0.3mg/mL濃度のL-チロシン溶液0.5mLに緩衝液およびカワラヨモギ花エキス(50%エタノール抽出)2mgを添加し、培養後に0.04mg/mLチロシナーゼ溶液を加えて培養したあとに吸光度を測定しメラニン生成抑制率を算出したところ、40.5%であった。

次に、日焼けした20人の女性被検者(30-40歳)に0.5%カワラヨモギ花エキス配合化粧水を2週間にわたって連用してもらい、2週間後に日焼けの軽減度を評価したところ、以下の表にように、

試料 症例数 有効 やや有効 無効
カワラヨモギ花エキス配合化粧水 20 6 6 12

0.5%カワラヨモギ花エキス配合化粧水は、チロシナーゼ活性を阻害してメラニンの生成を抑制する日焼け防止作用を有することが確認された。

このような試験結果が明らかにされており(文献13:1992)、カワラヨモギ花エキスにチロシナーゼ活性阻害による色素沈着抑制作用が認められています。

複合植物エキスとしてのカワラヨモギ花エキス

カワラヨモギ花エキスは、他の植物エキスとあらかじめ混合された複合原料があり、カワラヨモギ花エキスと以下の成分が併用されている場合は、複合植物エキス原料として配合されている可能性が考えられます。

原料名 プランテージ<ホワイト>EX
構成成分 オウゴン根エキスナツメ果実エキスカワラヨモギ花エキスマグワ根皮エキスカンゾウ根エキスBG
特徴 メラノサイト活性化因子の一種であるエンドセリン-1の抑制、メラニン生合成に必須の酵素であるチロシナーゼの活性阻害およびできてしまったメラニンの輸送抑制および排出促進といった多角的な色素沈着抑制作用を発揮する5種類の植物エキス混合液
原料名 SYプランテックスKN
構成成分 カワラヨモギ花エキスチョウジエキスカプリル酸グリセリルBG
特徴 3種類の抗菌作用をもつ天然植物系成分を組み合わせることで、コウジカビ、カンジダ、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、大腸菌など多角的な抗菌スペクトルを有した複合植物系抽出液
備考 カワラヨモギ花エキスに含まれる抗カビ成分はカピリンですが(文献14:2002)、単体で十分な抗カビ活性を付与しようとすると製品の色や臭いに影響を及ぼすため単体では防腐目的で配合されません(文献15:2006)

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カワラヨモギ花エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

カワラヨモギ花エキスの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 20年以上の使用実績
  • 皮膚一次刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚累積刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし(データなし)

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性について

一丸ファルコスの安全性試験データ(文献9:2006)によると、

  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した背部に固形分濃度1%カワラヨモギ花エキス水溶液0.03mLを塗布し、適用24,48および72時間後に一次刺激性を評価したところ、すべてのモルモットにおいて皮膚一次刺激性は認められなかった
  • [動物試験] 3匹のモルモットの剪毛した側腹部に固形分濃度2%カワラヨモギ花エキス水溶液0.5mLを1日1回、週5回2週間にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日に皮膚累積刺激を評価したところ、すべてのモルモットにおいて塗布後2週間にわたって皮膚刺激性は認められなかった

丸善製薬の安全性試験データ(文献13:1992)によると、

  • [ヒト試験] 20人の女性被検者に1%カワラヨモギ花エキス50%エタノール溶液を閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に皮膚刺激性を評価したところ、いずれの被検者においても皮膚刺激は認められなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激なしと報告されているため、一般に皮膚刺激性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

皮膚感作性(アレルギー性)について

日本薬局方および医薬部外品原料規格2006に収載されており、20年以上の使用実績がある中で重大な皮膚感作の報告がみあたらないため、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

∗∗∗

カワラヨモギ花エキスは抗炎症成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 鈴木 洋(2011)「茵蔯蒿(いんちんこう)」カラー版 漢方のくすりの事典 第2版,18-19.
  2. 御影 雅幸(2013)「インチンコウ」伝統医薬学・生薬学,104.
  3. 竹田 忠紘, 他(2011)「インチンコウ」天然医薬資源学 第5版,187.
  4. 根本 幸夫(2016)「茵蔯蒿(インチンコウ)」漢方294処方生薬解説 その基礎から運用まで,177-178.
  5. K. Tanaka, et al(2005)「Prevention of the Ultraviolet B-Mediated Skin Photoaging by a Nuclear Factor κB Inhibitor, Parthenolide」Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics(315)(2),624-630.
  6. 島田 眞路(1994)「表皮の免疫担当細胞について」日本臨床免疫学会会誌(17)(6),664-666.
  7. 西 達也(1995)「白血球はどのようにして炎症部位に集まるのか」化学と生物(33)(2),83-90.
  8. 門野 岳史(2010)「皮膚の炎症における細胞接着分子の役割」日本臨床免疫学会会誌(33)(5),242-248.
  9. 一丸ファルコス株式会社(2006)「インターロイキン-1α産生阻害剤」特開2006-124356.
  10. 朝田 康夫(2002)「メラニンができるメカニズム」美容皮膚科学事典,170-175.
  11. 日光ケミカルズ(2016)「美白剤」パーソナルケアハンドブックⅠ,534-550.
  12. 田中 浩(2019)「美白製品とその作用」日本香粧品学会誌(43)(1),39-43.
  13. 丸善製薬株式会社(1992)「活性酸素消去剤」特開平04-300812.
  14. 大嶋 悟士, 他(2002)「カワラヨモギの抗黴作用と化粧品用抗菌剤への応用」Fragrance Journal(30)(1),67.
  15. 山田 武, 他(2006)「カワラヨモギエキスの特性と化粧品用抗菌剤への展開」Fragrance Journal(34)(4),60-67.

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