カミツレ花エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 血行促進成分 収れん成分 美白成分
カミツレ花エキス
[化粧品成分表示名称]
・カミツレ花エキス

[医薬部外品表示名称]
・カモミラエキス(1)

[慣用名]
・カモミール、ジャーマンカモミール

キク科植物カミツレ(学名:Matricaria recutita = Matricaria Chamomilla)の花から抽出して得られるエキスです。

カミツレ花エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • 精油:ビサボロール、カマズレン
  • テルペンアルコール
  • フラボノイド類:アビゲニン、ルテオリン
  • アズレン

などで構成されています(文献2:2016;文献3:2016)

カミツレ花エキスは、もともとカモミール(ジャーマンカモミール)と呼ばれ、ハーブティーとして親しまれており、薬用ハーブとしても胸焼け、胃炎、生理痛、冷え症、不眠、皮膚炎、口内炎など幅広い薬効を有しており、主要成分は消炎成分のカマズレン、ビサボロール、強力な鎮痙作用を有しているフラボノイドのアピゲニンなどが知られています(文献3:2016)

化粧品に配合される場合は、消炎作用、保湿作用、収れん作用、血行促進作用、紫外線による色素沈着抑制作用、殺菌、鎮痒、充血除去、ヒスタミン遊離抑制があるとされており(文献2:2016)、スキンケア化粧品、日焼け止め製品、洗顔石けん、ボディソープ、メイクアップ化粧品などに使用されます。

1999年に花王株式会社と神戸大学医学部による共同研究として実施されたカミツレエキスの紫外線誘導色素沈着に対する抑制効果の検証によると、

健常男性22人の上腕内側に2MED(最小紅斑線量)の紫外線Bを含む人工紫外線を照射し、照射直後から0.5%カミツレエキス配合クリーム(∗1)またはプラセボクリームを1日2回塗布し、紫外線照射1,2および3週間後に誘導された色素沈着の比較検討をおこなった。

その結果、紫外線照射1週目および2週目において各試験クリーム塗布部位の肉眼判定による4段階黒化度評価、相対的な黒化度比較および色差測定のいずれの判定においても0.5%カミツレエキス配合クリームはプラセボクリームよりも有意に黒化度を下げる効果が観察され、紫外線による色素沈着に対する抑制作用を有することが確認された(以下の表およびグラフ参照)。

各クリーム塗布部位の4段階評価結果

各クリーム塗布部位のdLx値の推移

∗1 試験に使用されたカミツレエキスのカミツレはMatricaria Chamomillaであり、花部から抽出したエキスであると記載されているため、一般的なカミツレ花エキスであると判断しました。

このように報告されており(文献5:1999)、紫外線による色素沈着抑制効果が明らかになっています。

また、紫外線からメラニンが合成される仕組みは以下の図のようになっていますが、

美白作用点

美白作用点2

紫外線を照射されたケラチノサイトが紫外線情報伝達物質のひとつであるエンドセリンを産生・分泌し、エンドセリン受容体を持つメラノサイトがその情報を受け取って増殖分化することでメラノサイト内でメラニン合成が始まりますが、カミツレ花エキスにおける色素沈着抑制の作用機序は、美白作用として一般的なチロシナーゼ阻害のようにメラノサイト内のメラニン合成を直接阻害するものではなく、ケラチノサイトで産生・分泌されたエンドセリンによるメラノサイト活性化反応の抑制(エンドセリン伝達阻害作用)であると報告されています(文献6:1997)

つまり、ケラチノサイトで産生されたエンドセリンがメラノサイトで作用しないように阻害する作用なので、上の図では②に該当することになります。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2016年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

カミツレ花エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2016年)

複合植物エキスとしてのカミツレ花エキス

ファルコレックスBX44という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 角質水分量増加
  2. 経表皮水分損失抑制
  3. 抗炎症(ヒスタミン遊離抑制)
  4. 抗酸化(SOD様)
  5. 抗酸化(過酸化脂質生成抑制)
  6. メディエーター抑制(ヒスタミン遊離抑制)

とされており、肌の潤い促進、乾燥によるかゆみ抑制、過剰な皮脂抑制などそれぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって肌荒れやざ瘡を多角的に予防するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスBX44であると推測することができます。

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カミツレ花エキスの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

カミツレ花エキスの現時点での安全性は、健常な皮膚を有する場合において、皮膚刺激性および眼刺激性はほとんどなく、皮膚感作性(アレルギー性)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

キク科植物にアレルギーを有する場合、60%以上の高い確率で陽性反応が報告されているため、使用を控えることを推奨します。

ただし、カミツレ花エキスのアレルギー原因物質はセスキテルペンラクトン類ですが、化粧品原料としてのカミツレ花エキスの中にはアレルギー原因物質を除去していることも少なくないため、気になる方は販売メーカーに問い合わせて安全性を確認することを推奨します。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Safety Assessment of Chamomilla Recutita-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献1:2016)によると、

  • [ヒト試験] 105人の被検者に0.2%カミツレ花エキスを含むシェービングバームを誘導期間において合計9回の24時間閉塞パッチ適用を実施し、次いで10~15日間の休息期間野後に24時間チャレンジパッチを適用し、各パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、試験期間中に有害な影響は観察されず、皮膚感作の兆候はないと結論付けられた(TKL Resarch,2006)
  • [ヒト試験] 107人の健康な被検者の背部肩甲骨の間に0.4%カミツレ花エキスを含むアイローションを誘導期間において週3回合計9回半閉塞パッチ適用し、反応は24時間後(週末は48時間後)に評価した。2週間の未処置期間の後に背部未処置部位に24時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去48および72時間後に反応を評価したところ、試験期間中に皮膚反応は観察されなかった。0.4%カミツレ花エキスを含むアイローションは皮膚刺激または皮膚感作誘発の臨床的に有意な可能性を示さなかったと結論づけた(Clinical Research laboratories Inc,2009)

– キク科植物アレルギーを有している場合 –

  • [ヒト試験] キク科植物アレルギーを有する129人の患者に2.5%カミツレ花エキスを含むワセリンを2日間Finn Chamberパッチ適用し、皮膚反応をICDRGに従って2から4日にかけて、そして可能であれば5から8にかけて評価したところ、129人のうち83人(64%)の患者が陽性反応を示した。また、74人のキクアレルギーを有する患者に2.5%カミツレ花エキスを含むワセリンをパッチテストしたところ、58人(78%)の患者が陽性反応を示した(Paulsen, E. Andersen K. E. and Hausen B. M,2001)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、健常な皮膚を有する被検者に対しては皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、健常な皮膚を有する場合、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

キク科植物にアレルギーを有する場合は、60%を超える高い割合で陽性反応が報告されているため、キク科植物にアレルギーを有する場合、高い確率で皮膚感作反応が起こると考えられます。

ただし、化粧品原料としてのカミツレ花エキスの中にはアレルギーの原因物質であるセスキテルペンラクトン類を除去したものもあるので、気になる場合は販売メーカーに問い合わせて確認してください。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Amended Safety Assessment of Chamomilla Recutita-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献1:2016)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼の結膜嚢に1%~4.9%カミツレ花エキスを含む杏仁核油とミネラルオイルの混合物0.1mLを点眼し、眼をすすぎ、点眼1時間後および1,2,3および7日後に反応を評価したところ、この混合物は非刺激性に分類された(IFREB,1978)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に5%~9.9%カミツレ花エキスを含むプロピレングリコールおよび水の混合物の15%希釈水0.1mLを点眼し、点眼24,48および72時間後に反応を評価したところ、非刺激性に分類された(Centre de Recherche et d’Elevage des Oncins,1974)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.1%~0.9%カミツレ花エキスを含むプロピレングリコールおよび水の混合物を点眼し、点眼後に眼刺激性を評価したところ、非刺激性に分類された(IFREB,1980)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して非刺激性と報告されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
カミツレ花エキス 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、カミツレ花エキスは毒性なし(∗2)となっており、安全性に問題はないと考えられます。

∗2 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

カミツレ花エキスは抗炎症成分、収れん成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 収れん成分 美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2016)「Amended Safety Assessment of Chamomilla Recutita-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」,<https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR707.pdf> 2018年6月23日アクセス.
  2. 日光ケミカルズ(2016)「植物・海藻エキス」パーソナルケアハンドブック,p366.
  3. 林真一郎(2016)「ジャーマンカモミール」メディカルハーブの事典 改定新版,74-75.
  4. AHPA(米国ハーブ製品協会), Zoe Gardner, Michael McGuffin, et al.(2016)「Matricaria chamomilla L.」メディカルハーブ安全性ガイドブック 第2版,477-479.
  5. 市橋 正光, 小林 明美, 奥田 峰広, 芋川 玄爾(1999)「カミツレエキスの紫外線誘導色素沈着に対する抑制効果」皮膚(41)(4),475-480.
  6. Imokawa G, Kobayashi T, Miyagishi M, Higashi K, Yada Y(1997)「The role of endothelin-1 in epidermal hyperpigmentation and signaling mechanisms of mitogenesis and melanogenesis,」Pigment Cell Res(10),218-228.

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