イチョウ葉エキス(イチョウエキス)とは…成分効果と毒性を解説

抗炎症成分 抗酸化成分 血行促進成分
イチョウ葉エキス
[化粧品成分表示名称]
・イチョウ葉エキス、イチョウエキス

[医薬部外品表示名称]
・イチョウエキス

[慣用名]
・イチョウ葉抽出物

イチョウ科植物イチョウの葉から抽出したエキスです。

イチョウ葉エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • フラボノイド:ケルセチン(クエルセチン)、ケンフェロール、イソラムネチン
  • テルペノイド:ギンコライドA,B,C、ビロバライド

などで構成されています(文献2:2002;文献3:-)

イチョウ葉は、中国では何千年にもわたって漢方薬の中心的な存在であり、近年ヨーロッパにおいては医薬品として末梢血管疾患および脳血管障害に対する有用性が広く認められており、とくにその抗酸化作用が注目されています(文献4:1996)が、日本では「食品」として扱われているのが現状です。

化粧品に配合される場合は、抗炎症作用、血行促進作用、酸化ストレス除去作用などが報告されており、スキンケア化粧品、ボディケア製品、日焼け止め製品、パック・マスク製品、メイクアップ製品などに配合されます。

また、育毛効果が認められているため育毛剤、ヘアケア製品にも配合されています。

近年では、イチョウ葉エキスの酸化ストレス除去作用が注目されていますが、作用機序が複雑なので、先に酸化ストレス除去の仕組みについて解説しておきます。

– 酸化ストレス除去の仕組み –

生体の細胞内には、たんぱく質の酸化還元に関与するレドックス制御機構が備わっており、レドックス制御機構によって細胞内の酸化還元状態がコントロールされて恒常性が維持されています。

この細胞内のレドックス制御に関わる重要な因子のひとつに低分子たんぱく質であるチオレドキシンがあり、チオレドキシンを活性化させる酵素であるチオレドキシンリラクターゼが関与することで、チオレドキシンはそれ自体で一重項酸素やヒドロキシラジカルなどの活性酸素を消去します。

つまり、紫外線などによって細胞が酸化ストレスを受けると、細胞が自らを防御するためにチオレドキシンリラクターゼがチオレドキシンを活性化し、酸化ストレスを軽減または消去するということです。

また、チオレドキシンを外的に増やしたトランスジェニックマウスでは長寿になることが報告されており、チオレドキシンの活性化が抗老化につながると考えられています(文献5:2002;文献6:2009)

専門的な内容になりますが、これが細胞が酸化ストレスを軽減または消去する仕組みです。

これをふまえた上で、2013年に資生堂によってイチョウ葉エキスに含まれるケンフェロールが表皮角化細胞内のチオレドキシンリラクターゼおよびチオレドキシンに与える影響について研究したところ、

ヒト正常角化細胞をコンフルエント(細胞密度が最高であること)になるまで培養し、角化誘導した培養地にケンフェロール、およびよく知られた抗酸化剤であるα-リポ酸、α-トコフェロールを添加し、添加からさらに24時間後にチオレドキシンリラクターゼ1遺伝子ならびにチオレドキシン遺伝子の発現量を定量したところ、以下のグラフのように、

チオレドキシンリラクターゼ1遺伝子発現量比較

チオレドキシン遺伝子発現量比較

ケンフェロールは培養ヒト表皮角化細胞のチオレドキシンリラクターゼ1遺伝子およびチオレドキシン遺伝子の発現を上昇させることが明らかになり、一方でα-リポ酸、α-トコフェロールは効果がみられなかった。

次に、チオレドキシンリラクターゼ1遺伝子およびチオレドキシン遺伝子発現に与える影響をほかのフラボノイド化合物と比較したところ、

各フラボノイドにおけるチオレドキシンリラクターゼ1遺伝子発現量比較

各フラボノイドにおけるチオレドキシン遺伝子発現量比較

ケンフェロールと同じフラボノールに属するケルセチンやミリセチンは、ケンフェロールと同様にチオレドキシンリラクターゼ1遺伝子およびチオレドキシン遺伝子を上昇させる効果を有していることが明らかになり、一方でほかのフラボノイド(アピゲニン、エピガロカテキンガレート、ゲニステイン)には効果がみられないもしくは効果が限定的であった。

これらの結果からチオレドキシンリラクターゼ1遺伝子およびチオレドキシン遺伝子の活性化作用は、フラボノイドの中でもフラボノール類に特徴的な作用であることが示唆された。

この結果を受けて、ケンフェロールを多く含むことが知られているイチョウ葉エキスをヒト表皮角化細胞に添加し、24時間後にチオレドキシンリラクターゼ1遺伝子の発現量を定量したところ、以下のグラフのように、

イチョウ葉エキス添加による表皮角化細胞のチオレドキシンリラクターゼ1遺伝子発現量

イチョウ葉エキスの添加により、発現量が上昇することが明らかになった。

これらの結果からケンフェロールやケルセチンは、表皮角化細胞を紫外線などの酸化ストレスから防御し、皮膚を健やかで若々しく維持することが期待され、ケンフェロールを多く含むことで知られているイチョウ葉エキスにも表皮角化細胞内の抗酸化作用を高める作用を有することがわかった。

このような研究結果が報告されており(文献7:2013)、抗酸化作用および酸化ストレス除去作用が認められています。

イチョウ葉エキスには、育毛・発毛効果があるとされていますが、育毛・発毛効果の根拠となっているのは、2007年に関西大学化学生命工学部によって以下の研究結果が報告されたことにあります(文献8:2007)

イチョウ葉には様々なフラボノイド類が含まれており、その中にフラボン2分子が化学結合して2量体になったビフラボン類と呼ばれる化合物群が存在する。

このビフラボン類を数種類含むエキスを剃毛したマウスの背中に塗布したところ、有意にその部位の発毛が促進され、またヒトの毛髪関連細胞の培養にビフラボン類の溶液を添加すると、その細胞の増殖が増進することがわかった。

ビフラボンにも数種類あり、その中でもシアドピチシンと呼ばれるビフラボンに最も強い細胞増殖活性が認められ、この物質を細胞に添加すると増殖を司る細胞内タンパク質が活性化されることが明らかになった。

2点注意してほしいことがあり、ひとつは、一般的な化粧品原料としてのイチョウ葉エキスには、ビフラボン類はほとんど含まれておらず、育毛・発毛効果が期待できるのはあくまでもビフラボン類が含まれるイチョウ葉エキスであるということです。

もうひとつは、この研究の詳細な論文または資料がみあたらず、具体的なイチョウ葉エキスの濃度や塗布期間、他の発毛・育毛成分との比較効果などが不明であるため、実質どれほどの効果が期待できるのかが不明であることです(この点は詳細な資料がみつかれば訂正する予定です)。

実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2014-2017年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

イチョウ葉エキスの配合製品数と配合量の調査結果(2014-2017年)

複合植物エキスとしてのイチョウ葉エキス

エムエスエキストラクト<マンスールS>という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、

効果および配合目的は、

  1. 収れん作用

とされており、植物エキスの相乗効果によって皮膚を多角的に引き締めるため、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はエムエスエキストラクト<マンスールS>であると推測することができます。

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イチョウ葉エキスの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

イチョウ葉エキスの現時点での安全性は、皮膚刺激性および眼刺激性はほとんどなく、皮膚感作性(アレルギー性)の報告もないため、安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Ginkgo biloba-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献1:2018)によると、

  • [ヒト試験] 48人の被検者に0.0085%イチョウ葉エキスを含むクリームを誘導期間およびチャレンジ期間において閉塞パッチ適用し、各パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(Anonymous,2018a)
  • [ヒト試験] 109人の被検者に0.0072%イチョウ葉エキスを含むリップ製品を誘導期間およびチャレンジ期間において閉塞パッチ適用し、各パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激および皮膚感作を誘発しなかった(Anonymous,2018b)
  • [ヒト試験] 201人の被検者に0.1%イチョウ葉エキスを含むリーブオン(つけっぱなし)製品を誘導期間およびチャレンジ期間において半閉塞パッチ適用し、各パッチ除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚感作を誘発しなかった(Anonymous,2017)
  • [ヒト試験] 208人の被検者に0.2%イチョウ葉エキスを含む化粧水0.2mLを誘導期間およびチャレンジ期間において半閉塞Webril pad適用し、各pad除去後に皮膚反応を評価したところ、皮膚感作を誘発しなかった(TKL Research Inc,2003)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激はおよび皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

補足として、イチョウ葉そのものには多量に摂取すると皮膚炎を起こすといわれているアレルギー物質のギンコール酸が含まれていますが、イチョウ葉エキスではドイツなどの医薬品規格では5ppm以下に定められており、化粧品原料としても配慮されてるものがほとんどですが、すべてのイチョウ葉エキスがそのように配慮されているとは限らない(規約などで定められていない)ため、心配な場合は販売元への確認を推奨します。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Ginkgo biloba-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献1:2018)によると、

  • [in vitro試験] 正常ヒト表皮角化細胞によって再構築された3次元培養角膜モデル(EpiOcular)を用いて、モデル角膜表面に0.013%イチョウ葉エキスを含むアイ眼用製品を処理したところ、試験物質は眼刺激の可能性はないと予測された(Anonymous,2018c)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、眼刺激性の可能性はないと予測されているため、眼刺激性はほとんどないと考えられます。

光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Ginkgo biloba-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」(文献1:2018)によると、

  • [ヒト試験] 29人の被検者に0.0072%イチョウ葉エキスを含むリップ製品を半閉塞パッチ適用したところ、光毒性または光感作性は報告されていない(Anonymous,2018d)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、光毒性および光感作性は報告されていませんが、光毒性および光感作性に関する試験の報告かどうか不明だと判断したため、光毒性および光感作性はデータ不足のため詳細は不明です。

安全性についての捕捉

イチョウ葉は、国内の街路樹や公園などでもみられますが、これらのイチョウを摘み取って自身でアルコール抽出した場合、アレルギー成分であるギンコール酸が多量に含まれているので、自身で抽出したエキスの使用は推奨しません。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
イチョウ葉エキス 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、イチョウ葉エキスは毒性なし(∗1)となっており、安全性に問題はないと考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

イチョウ葉エキスは抗炎症成分、抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗炎症成分 抗老化成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2018)「Safety Assessment of Ginkgo biloba-Derived Ingredients as Used in Cosmetics」,<https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/TR753.pdf> 2018年6月14日アクセス.
  2. “国民生活センター”(2002)「イチョウ葉食品の安全性 – アレルギー物質とその他の特有成分について考える -」,<http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20021125.pdf> 2018年6月14日アクセス.
  3. “Wikipedia”(-)「イチョウ」,<https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%81%E3%83%A7%E3%82%A6> 2018年6月14日アクセス.
  4. Y.Rong, Z.Geng, B.H.S.Lau(1996)「Ginkgo biloba modulates glutathione redox cycle in vascular endothelial cells」Nutr Res(16)(11/12),1913-1923.
  5. Mitsui A, et al.(2002)「Overexpression of human thioredoxin in transgenic mice controls oxidative stress and life span」Antioxid Redox Signal(4)(4),693-696.
  6. 榮長 裕晴, 吉原 栄治, 松尾 禎之, 淀井 淳司(2009)「酸化ストレスとレドックス制御 ~タンパク質の酸化的修飾と活性調整~」生物試料分析(32)(4),265-272.
  7. 勝田 雄治, 菅原 美郷, 仲西 城太郎(2013)「ケンフェロールによるチオレドキシンシステムの活性化とイチョウ葉抽出液の効果」Fragrance Journal(41)(2),22-26.
  8. 長岡康夫(2007)「イチョウ葉に含まれる育毛活性成分」,<https://www.kansai-u.ac.jp/global/guide/conference/2007/070418.pdf> 2018年6月15日アクセス.

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