酢酸トコフェロールとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化成分 血行促進成分 酸化防止剤
酢酸トコフェロール
[化粧品成分表示名称]
・酢酸トコフェロール

[医薬部外品表示名称]
・酢酸DL-α-トコフェロール

酢酸とトコフェロール(ビタミンE)のエステルで、水にはほとんど溶けず、植物オイルなどによく溶けるdl-α-トコフェロール誘導体です。

皮膚に含まれている酵素と結合して、皮膚内でトコフェロール(ビタミンE)に変化するため、代謝活性効果、消炎効果、抗酸化作用、血行促進作用などビタミンE同様の働きがあります。

化粧品に配合する場合は、皮膚や頭皮の血行を促進し、酸化を抑制することで肌荒れ防止、日焼けによるメラニン促進抑制、ニキビ、フケ、脱毛などを防止するため、肌荒れを防ぐ化粧品、エイジングケア化粧品、血色を良くして肌を明るくする化粧品などに幅広く使用されています。

また、成分そのものの酸化防止剤として配合されたり、有効成分をリポソーム化(∗1)するための原料としても広く使用されており、これらでの使用の場合はごく微量になります。

∗1 リポソームとは、生体細胞と同じ成分でつくられたカプセルのことで、有効成分をリポソーム化(カプセル化)することで、有効成分の分散性がよくなったり、ジワジワとゆっくり溶け出すことで成分の効果が長時間にわたって発揮されたりします。

酸化防止目的の場合は、植物油によく溶けるので、植物油の酸化防止で使われることが多く、成分表示一覧に植物油と酢酸トコフェロールが併用されていたら酸化防止剤としての可能性があります。

また、リポソームとして配合されている場合は、レシチン系の成分と併用されていることが多いです。

実際にどのような製品に配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

酢酸トコフェロールの配合比較調査(1998-2014年)

酢酸トコフェロールは医薬品成分のため化粧品に配合する場合は以下の配合範囲内においてのみ使用できます。

粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流すもの 無制限
粘膜に使用されることがない化粧品のうち洗い流さないもの 3.03g/100g
粘膜に使用されることがある化粧品 3.03g/100g

また、医薬部外品に配合する場合は以下のような前例となっています。

酢酸トコフェロールの配合範囲

スポンサーリンク

酢酸トコフェロールの安全性(刺激性・アレルギー)について

酢酸トコフェロールの現時点での安全性は、皮膚刺激性、光毒性はほとんどありませんが、一過性のわずかな眼刺激が起こる可能性があるものの、皮膚感作性(アレルギー性)および光感作性の報告もほとんどないため、安全性の高い成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性および皮膚感作性(皮膚アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Tocopherol,Tocopheryl Acetate, Tocopheryl Linoleate, Tocopheryl Linoleate/Oleate, Tocopheryl Nicotinate, Tocopheryl Succinate, Dioleyl Tocopheryl Methylsilanol, Potassium Ascorbyl Tocopheryl Phosphate, and Tocophersolan」(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 110人の被検者(男性18人、女性92人)の背中に0.1%酢酸トコフェロールを含むローション0.2gを誘導期間において週3回合計9回にわたって24時間半閉塞パッチ適用し、10~14日の休息期間を経て24時間チャレンジパッチを未処置部位に適用し、適用24および48時間後に試験部位をスコアリングしたところ、誘導またはチャレンジ期間で皮膚反応は観察されなかったため、0.1%酢酸トコフェロールを含むローションは刺激剤および増感剤ではなかった(AMA Laboratories, Inc.,1996)
  • [ヒト試験] 8人の被検者の肩甲骨間領域に100%酢酸トコフェロールおよび50%,20%,5%および1%酢酸トコフェロールを含むワセリン0.5mLを21日間にわたって24時間閉塞パッチ適用し、各パッチ除去10分後に試験部位をスコアリングした。平均刺激スコアは0~4のスケールで、100%は0であり、50%,20%,5%,1%ははそれぞれ0.312,1.0,0.312,0.875であった。また対照としてのワセリンのみの刺激スコアは0.125であった(Roche,1999)
  • [ヒト試験] 203人の被検者に酢酸トコフェロール(濃度不明)を誘導期間において週3回合計10回にわたって適用し、2週間の無処置期間のあとチャレンジパッチを3日間行ったところ、総刺激スコアは15.5であり、平均刺激強度指数は0.076であった。感作値はすべて陰性であった。酢酸トコフェロールは一次刺激剤ではなく、遅延過敏症を引き起こさないと結論付けられた

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Tocopherols and Tocotrienols as Used in Cosmetics」(文献2:2014)によると、

  • [ヒト試験] 19人の被検者に36%酢酸トコフェロールを含むキューティクル軟化剤を24時間単一閉塞パッチ適用したところ、1人の被検者は+反応を有し、刺激スコアは0.03であった。
  • [ヒト試験] 203人の被検者に酢酸トコフェロールを誘導期間において2週間にわたって10回適用し、2週間の休息期間のあとチャレンジパッチを1日1回3日間適用したところ、誘導期間のそれぞれの被検者の平均刺激スコアは0.076であり、いずれの被検者も高い刺激性を示さず、またチャレンジパッチ後に陽性反応は報告されなかった

開発元のBASFの安全性データシート(文献3:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた酢酸トコフェロールの皮膚刺激性試験をOECDテストガイドライン404に準じて行ったところ、刺激性なし
  • [動物試験] 動物試験では皮膚感作性は認められなかった

と記載されています。

試験結果では、いずれも刺激性および感作性なしと報告されているため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Tocopherol,Tocopheryl Acetate, Tocopheryl Linoleate, Tocopheryl Linoleate/Oleate, Tocopheryl Nicotinate, Tocopheryl Succinate, Dioleyl Tocopheryl Methylsilanol, Potassium Ascorbyl Tocopheryl Phosphate, and Tocophersolan」(文献1:2002)によると、

  • [動物試験] 酢酸トコフェロールはウサギの眼を刺激しないと述べられている(BASF,1993;Hoffmann-LaRoche,1996)
  • [動物試験] 酢酸トコフェロールはウサギの眼に刺激を与えなかった(BASF,1996)

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Tocopherols and Tocotrienols as Used in Cosmetics」(文献2:2014)によると、

  • [動物試験] 3匹のウサギの結膜嚢に100%酢酸トコフェロールを注入し、眼はすすがず、点眼1,24,48および72時間後に眼をスコアリングしたところ、1~48時間でわずかな刺激が観察されたが、72時間では正常であった
  • [動物試験] 6匹のウサギに100%dl-α-トコフェロールを注入し、眼はすすがず、Draize法に準じてスコアリングしたところ、軽度の刺激(発赤)が観察されたが、7日目までには落ち着いた。角膜の変化は報告されなかった

開発元のBASFの安全性データシート(文献3:2016)によると、

  • [動物試験] ウサギを用いた酢酸トコフェロールの眼刺激性試験をOECDテストガイドライン405に準じて行ったところ、刺激性なし

と記載されています。

試験結果では、正常には戻るものの数日のわずかな刺激や発赤が報告されているため、眼刺激性は一過性のわずかな眼刺激が起こる可能性があると考えられます。

光毒性および光感作性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Tocopherol,Tocopheryl Acetate, Tocopheryl Linoleate, Tocopheryl Linoleate/Oleate, Tocopheryl Nicotinate, Tocopheryl Succinate, Dioleyl Tocopheryl Methylsilanol, Potassium Ascorbyl Tocopheryl Phosphate, and Tocophersolan」(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 11人の被検者の腰背部の2箇所に酢酸トコフェロール0.2mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去後に処置部位のひとつおよび未処置部位にUVAを5~8分照射した。試験および対照部位は照射の15分後および24および48時間後にスコアリングされた。酢酸トコフェロールは光毒性ではなく、照射部位および非照射部位で反応は観察されなかった(Consumer Product Testing Co.,1992)

“Cosmetic Ingredient Review”の「Safety Assessment of Tocopherols and Tocotrienols as Used in Cosmetics」(文献2:2014)によると、

  • [動物試験] 20匹のモルモットの8c㎡領域に酢酸トコフェロールを皮内注射し、試験部位にUVB(1.8J/c㎡)およびUVA(10J/c㎡)を照射する手順を2週間以内に4回繰り返し、10匹の対照群は酢酸トコフェロールのみで処置した。1週間の無処置期間をおいて100%,75%,50%,25%酢酸トコフェロールを含むエタノールを側面に適用し、処置部位にUVAを照射または照射せず、24,48および72時間後にスコアリングしたところ、チャレンジ後に20匹のモルモットのうち2匹でわずかな紅斑が観察されたが、照射した試験部位と照射されていない試験部位との間に一貫した有意な差異が認められず、反応は試験物質の濃度に依存しなかった。反応は皮膚過敏症の可能性が最も高いと述べられており、対照群では反応は観察されなかった

開発元のBASFの安全性データシート(文献3:2016)によると、

  • [動物試験] モルモットを用いた酢酸トコフェロールの光感作性試験を行ったところ、感作性なし

と記載されています。

試験結果では光毒性はなしと報告されており、光感作に関しては照射試験部位と非照射試験部位との間に一貫した差異は認められないと報告されているため、光毒性および光感作性はないと考えられます。

安全性についての捕捉

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Tocopherol,Tocopheryl Acetate, Tocopheryl Linoleate, Tocopheryl Linoleate/Oleate, Tocopheryl Nicotinate, Tocopheryl Succinate, Dioleyl Tocopheryl Methylsilanol, Potassium Ascorbyl Tocopheryl Phosphate, and Tocophersolan」(文献1:2002)によると、

  • [ヒト試験] 1%,2.5%および5%酢酸トコフェロールを適用した後の経表皮水分損失(TEWL)を測定したところ、1%および2.5%酢酸トコフェロールはTEWLの有意な減少をもたらさなかったが、5%酢酸トコフェロールを30分間適用するとTEWLが19%減少した。また、1日2回5%酢酸トコフェロールを適用した4日後にはTEWLは24%減少した

と記載されています。

経表皮水分損失(TEWL)とは、表皮の水分蒸発量のことですが、試験結果によると、酢酸トコフェロールが5%濃度で水分蒸発量が有意に高くなることが明らかになっており、また2.5%以下では水分蒸発量に有意な影響がないことも明らかになっています。

ただし、成分そのものの酸化防止やリポソーム化として配合される場合はもちろん、医薬部外品としての配合範囲は上限でも0.5%ですし、化粧品でも皮膚に接触する場合は医薬部外品の範囲内を大幅に超える配合はほとんどないと思われます。

化粧品として販売されており、あきらかに1%を超えていると推測できる成分表示順である場合は、販売メーカーに2.5%以下の配合であるか確認してください。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
酢酸トコフェロール 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、酢酸トコフェロールは毒性なし(∗3)となっており、安全性に問題がないと考えられます。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

酢酸トコフェロールは抗老化成分、抗酸化成分、血行促進成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗老化成分 抗酸化成分 血行促進成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(2002)「Final Report on the Safety Assessment of Tocopherol,Tocopheryl Acetate, Tocopheryl Linoleate, Tocopheryl Linoleate/Oleate, Tocopheryl Nicotinate, Tocopheryl Succinate, Dioleyl Tocopheryl Methylsilanol, Potassium Ascorbyl Tocopheryl Phosphate, and Tocophersolan」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.1080/10915810290169819> 2018年2月23日アクセス.
  2. “Cosmetic Ingredient Review”(2014)「Safety Assessment of Tocopherols and Tocotrienols as Used in Cosmetics」, <https://online.personalcarecouncil.org/ctfa-static/online/lists/cir-pdfs/FR667.pdf> 2018年2月23日アクセス.
  3. BASF(2016)「安全性データシート」, <https://worldaccount.basf.com/wa/AP~ja_JP/Catalog/Cosmetics/doc4/BASF/PRD/30499500/.pdf?asset_type=msds/pdf&language=JA&validArea=JP&urn=urn:documentum:ProductBase_EU:09007af88037cc03.pdf> 2018年2月23日アクセス.

スポンサーリンク

TOPへ