レチノールとは…成分効果と毒性を解説

抗シワ成分
レチノール
[化粧品成分表示名称]
・レチノール

[医薬部外品表示名称]
・レチノール

[慣用名]
・純粋レチノール

栄養素ビタミンA₁としてよく知られている油溶性(脂溶性)の有機化合物です(∗1)

∗1 本来ビタミンAは、ビタミンAの生理的効果を有したビタミンA₁(レチノール、レチナール、レチノイン酸)およびビタミンA₂(デヒドロレチノール、デヒドロレチナール、デヒドロレチノイン酸)の総称ですが、一般的にはビタミンA₁のことを指して用いられ、狭義にはレチノールを指して用いられます。

汎用されているレチノールは、化粧品成分表示としてのレチノールですが、2017年に医薬部外品シワ改善有効成分に承認されており、その場合は医薬部外品表示名(有効成分)として「レチノール」と記載され、一般的には純粋レチノールと呼びます。

生体内においてレチノールは、

レチノール(ビタミンAアルコール) → レチナール(ビタミンAアルデヒド) → レチノイン酸(ビタミンA酸:トレチノイン)

このように酸化による変換を経て、生理活性として主に上皮組織の分化増殖の制御を担っており、作用の大部分はレチノール酸(ビタミンA酸:トレチノイン)であることが知られています(文献2:1990)

レチノイン酸は、欧米では40年以上前からニキビ治療薬として認可され広く使用されており、また1997年にはアメリカのFDA(Food and Drug Administration:食品医薬品局)にシワなどの光障害皮膚の改善剤という新効能医薬品の第1号として認可されています。

ただし、日本では、日本人における有用性試験において、紫外線による表面的なシワの改善効果は認められるものの、白人と比較して高確率で高い皮膚刺激性が生じるため(文献3:1993)、医薬品として未承認となっており、化粧品としてもほとんど使用されません。

一方でレチノールは、レチノイン酸ほど有意ではないもののシワに対して有用であり、レチノール酸配合クリームの使用において皮膚刺激も認めらませんが、非常に不安定で熱、光および酸素に対して非常に弱く、化粧品においてそのまま配合されることは多くありません。

汎用されているレチノールにおいては、トコフェロールなどの酸化防止剤を併用、および/または様々なカプセル技術で内包することで安定性を高めて配合されます。

カプセル化技術のひとつとしてリポソーム技術について解説しておきますが、まず前提知識として以下の図を用いて細胞膜の構造を解説します。

細胞膜の構造

細胞膜はリン脂質で構成されており、リン脂質は2つの脂肪酸鎖(テール部分:疎水性)と2つのリン酸基(頭部:親水性)で構成されています。

水溶液中では、疎水性(脂溶性)の脂肪酸鎖が自ら離れて内側に向くようにリン脂質分子が自動的に自己集合し、親水性のリン酸基は液体に向かって動くため、外側に位置します。

この自己配列の性質は、以下の図のように、

リポソームの構造

二重層の膜で囲まれたリポソームと呼ばれる閉じた球状の構造をもたらします。

このリポソームは、水溶性の有効成分を真ん中の親水性部分に充填し、また脂肪酸鎖部分には疎水性(脂溶性)の有効成分を内包することで高い安定性とともに皮膚内に浸透させることができ、皮膚内で有効成分の効果を発揮させるDDS(Drug Derivery System)と呼ばれる医薬品に用いられている技術を化粧品に応用したものです。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、アイケア化粧品、リップケア製品、シート&マスク製品などに使用されています。

表皮ヒアルロン酸合成促進による抗シワ作用

表皮ヒアルロン酸産生促進による抗シワ作用に関しては、まず前提知識として表皮におけるヒアルロン酸の機能について解説します。

ヒアルロン酸は、ここまで解説してきたように、真皮において規則的に配列したコラーゲンとエラスチンの繊維間を充たし、水分を大量に保持することで、皮膚に弾力性と柔軟性を与えるゲル状の高分子多糖体として知られています。

一方で、ヒアルロン酸は表皮層や角層においても密接に隣接した細胞間に網目状に高濃度で存在することが確認されており、表皮細胞間において増殖・分化・移動・接着といった基本的な細胞機能と密接な関係があり、下層細胞間の細胞外空間維持、上層の細胞への栄養供給、老廃物の排出促進などの機能が明らかになっています(文献6:2013;文献7:2009)

このような背景から、加齢にともなう表皮ヒアルロン酸の減少は皮膚機能の低下に関与すると考えられており(文献6:2013)、表皮ヒアルロン酸の産生を促進することは抗老化において重要であると考えられます。

2001年に資生堂によって報告されたレチノールのシワへの影響検証によると、

培養ヒト表皮細胞のヒアルロン酸合成へおよぼすレチノールの影響を検討するために、各濃度のレチノールを添加したところ、以下のグラフのように(∗2)

∗2 10⁻⁹:0.000000001、10⁻⁸:0.00000001、10⁻⁷:0.0000001、10⁻⁶:0.000001

培養ヒト表皮細胞のヒアルロン酸合成におよぼすレチノールの影響

レチノールは、濃度依存的に表皮ヒアルロン酸合成の増加を示した。

次にレチノールのシワへおよぼす影響を検討するために、レチノール配合クリームを1日2回12週にわたって顔面目尻部分に使用し、使用前、6および12週目にSHISEIDO Wrinkle Analyzer Pro(三次元形状計測・解析システム)を用いて、シワの総長、本数および総表面積を計測したところ、以下のグラフのように、

レチノール配合クリーム使用による各シワパラメーターの変化

レチノールは、シワの総長、本数および総表面積ともに有意に減少しているのが確認された。

ただし、シワ改善効果は6週間以内に現れるが、塗布を継続してもさらなるシワの改善は認められず、むしろある一定の状態が維持されるといった効果であった。

また、レチノール配合クリームの塗布を中止すると効果が徐々に弱まりなくなっていく可逆的な効果であった。

このような検証結果が明らかにされており(文献5:2001)、レチノールに表皮ヒアルロン酸合成促進による抗シワ作用が認められています。

ただし、レチノールの抗シワ効果は、1日2回塗布の場合、6週間以内に現れ、それ以後の使用はその6週間までの効果の維持となり、また使用を止めると徐々に元の状態に戻っていく可逆性を有しています。

レチノールのシワへの作用メカニズムは、表皮ヒアルロン酸の合成促進によるものであることが報告されています(文献5:2001)

また、2017年にシワ改善有効成分として承認された作用メカニズムもこの表皮ヒアルロン酸の合成促進によるものです。

効果・作用についての補足

レチノールには、表皮ヒアルロン酸合成促進のほかに、真皮細胞外マトリックス構成成分であるコラーゲンの合成促進および紫外線によるコラーゲン分解酵素活性化の抑制作用が報告されています(文献8:2000)

前提知識として、真皮におけるコラーゲンおよびコラーゲン分解酵素であるMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

コラーゲンは、真皮に存在する線維芽細胞から産生される白い紐状のタンパク質からなる丈夫な太い繊維で、膠質状の性質を持ち、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支えています(文献9:2002)

一方で、コラーゲンはコラーゲン分解酵素であるMMP(Matrix metalloproteinase:マトリックスメタロプロテアーゼ)によって分解されることで、産生と分解がバランスし、代謝しています。

ただし、紫外線を浴び(続け)ると、MMPが活性化し、コラーゲンを必要以上に分解し、結果的にコラーゲンが減少することが知られています。

レチノールは、紫外線によるMMP活性の抑制およびコラーゲン合成の促進効果が報告されていますが、海外での1%濃度における試験データであり、国内では化粧品において1%濃度で配合されないと推測され、また1%未満濃度において有意にコラーゲン合成促進およびMMP活性抑制効果が認められるかは不明であることから、化粧品におけるコラーゲン合成促進およびMMP活性抑制効果は保留とし、有用性データがみつかりしだい追補します。

また、レチノールの生理活性として上皮組織細胞の分化・増殖のコントロールがあり、この活性によってターンオーバーによる細胞賦活作用も示唆されていますが(文献11:2005)、化粧品における濃度において、この作用における有用性試験データなどがみあたらないため、データがみつかりしだい追補します。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1981年および2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

レチノールの配合製品数と配合量の調査結果(1981年および2013年)

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レチノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

レチノールの現時点での安全性は、

  • 医薬部外品有効成分
  • 生体内に存在する成分
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

資生堂の試験データ(文献5:2001)によると、

  • [ヒト試験] 被検者(人数不明)にレチノール配合クリームを1日2回12週にわたって顔面目尻部分に使用し、使用前、6および12週目に皮膚反応を評価したところ、皮膚刺激は認められなかった

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] トレチノインに陽性反応を示した2人のボランティアに0.1%レチノールを含む軟膏を塗布したところ、陰性であった。またこの2人に8ヶ月後に同様の試験を実施したところ、陰性であった(Jordan,1975)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性および皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

安全性についての捕捉

レチノールおよびその誘導体または関連物質は総じてレチノイドと呼ばれますが(文献2:1999)、海外では光老化治療においてレチノイド療法が採用されていますが、レチノイドの中でもトレチノイン(レチノイン酸)は皮膚刺激性が強く、ときに灼熱感、鱗屑化および乾燥をともなうことが知られています(文献10:2006)

一方で、レチノールはかなり皮膚刺激が低く(文献10:2006)、それゆえ日本においても化粧品原料としてとくに配合上限もなく認可されていると考えられますが、レチノールが効果を発揮するための基礎化粧品での最適な配合濃度は0.01%-0.1%と報告されており(文献11:2005)、試験データをみるかぎりでは0.1%濃度が目安となっていると考えられます。

∗∗∗

レチノールは抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗老化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Retinyl Palmitate and Retinol」International Journal of Toxicology(6)(3),279-320.
  2. 影近 弘之, 他(1990)「レチノイド : ビタミンAは治療薬になるか」ファルマシア(26)(1),35-40.
  3. T Tadaki, et al(1993)「The Effect of Topical Tretinoin on the Photodamaged Skin of the Japanese」The Tohoku Journal of Experimental Medicine(169)(2),131-139.
  4. R Caldera, et al(1983)「The Cutaneous Absorption of Vitamin A」Developmental Pharmacology and Therapeutics(7),213-217.
  5. 圷 信子(2001)「レチノール含有抗シワ化粧品の研究開発」Fragarance Journal(29)(2),37-42.
  6. 佐用 哲也(2013)「表皮ヒアルロン酸合成制御機構の解明」東京薬科大学(323).
  7. 井上 紳太郎(2009)「皮膚ヒアルロン酸の不思議」グルコサミン研究(5),4-10.
  8. J Varani, et al(2000)「Vitamin A antagonizes decreased cell growth and elevated collagen-degrading matrix metalloproteinases and stimulates collagen accumulation in naturally aged human skin.」Journal of Investigate Dermatology(114)(3),480-486.
  9. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  10. S Mukherjee, et al(2006)「Retinoids in the treatment of skin aging: an overview of clinical efficacy and safety」Clinical Inventions in Aging(1)(4),327–348.
  11. E Perrier, et al (2005)「カプセル化技術を用いたレチノールの生物学的利用能(バイオアベイラビリティー)の改善および炎症誘発能の低下」Fragarance Journal(33)(5),89-93.

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