ブドウ葉エキスとは…成分効果と毒性を解説




・ブドウ葉エキス
[医薬部外品表示名称]
・ブドウ葉エキス
ブドウ科植物アカブドウ(学名:Vitis Vinifera 英名:Grape)の葉から水、BG(1,3-ブチレングリコール)、またはこれらの混合で抽出して得られるエキスです。
ブドウ葉エキスの成分組成は、天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、
- タンニン
- アントシアニン
- 糖
- 有機酸
などで構成されています(文献1:2006;文献2:-)。
アカブドウはアジア西部原産で、世界各国に広く栽培されており、日本へは中国を経て渡来し、多数の品種があります。
アカブドウの葉は、薬用として水腫、目赤、小便不利、できものなどに使用されます(文献3:-)。
化粧品に配合される場合は、
これらの目的で、スキンケア化粧品、ボディ&ハンドケア製品、メイクアップ化粧品、洗顔料、日焼け止め製品、シート&マスク製品など幅広く様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献4:2003;文献5:2003;文献8:1998)。
ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼおよびエラスターゼ活性阻害による抗老化作用
ヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼおよびエラスターゼ活性阻害による抗老化作用に関しては、まず前提知識としてヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼおよびエラスターゼを解説します。
以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、
皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。
ヒアルロン酸は、真皮の中で広く分布するゲル状の高分子多糖体として知られており、規則的に配列したコラーゲンとエラスチンの繊維間を充たし、水分を大量に保持することで、皮膚に弾力性と柔軟性を与えています(文献6:2002)。
ヒアルロニダーゼは、ヒアルロン酸を分解する酵素であり、通常はヒアルロン酸の産生と分解がバランスすることで一定のヒアルロン酸量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとヒアルロニダーゼが活性化し、ヒアルロン酸の分解が促進されることでヒアルロン酸の質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。
コラーゲンは、細胞外マトリックスの主成分であり、膠質状の性質を持つ白い紐状のタンパク質からなる丈夫な太い繊維で、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支えています(文献7:2002)。
コラゲナーゼは、コラーゲンを分解する酵素であり、通常はコラーゲンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとコラゲナーゼが活性化し、コラーゲンの分解が促進されることでコラーゲンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。
エラスチンは、2倍近く引き伸ばしても緩めるとゴムのように元に戻る弾力繊維で、コラーゲンとコラーゲンの間にからみあうように存在し、コラーゲン同士をバネのように支えて皮膚の弾力性を保っています(文献7:2002)。
エラスターゼは、エラスチンを分解する酵素であり、通常はエラスチンの産生と分解がバランスすることで一定のコラーゲン量を保っていますが、皮膚に炎症や刺激が起こるとエラスターゼが活性化し、エラスチンの分解が促進されることでエラスチンの質的・量的減少が起こり、皮膚老化の一因となると考えられています。
2003年に一丸ファルコスによって公開された技術情報によると、
0.05%または0.5%ブドウ葉エキスのヒアルロニダーゼ阻害、コラゲナーゼ阻害率およびエラスターゼ阻害率を検討するためにin vitro試験を実施したところ、以下の表のように、
濃度(%) | コラゲナーゼ阻害率 | エラスターゼ阻害率 | ヒアルロニダーゼ阻害率 |
---|---|---|---|
0.5 | 50.11 | ||
0.05 | 40.0 | ||
0.5 | 38.0 |
ブドウ葉エキスは、ヒアルロニダーゼ活性、コラゲナーゼ活性およびエラスターゼ活性を有意に阻害する作用を有することが確認できた。
またヒト使用試験として5%ブドウ葉エキス配合乳液を10人の成人女性(25~50歳)に毎日朝と夜の2回3ヶ月にわたって洗顔後に顔面に適量を塗布してもらい、3ヶ月後に評価した。
評価結果は肌のハリ・ツヤにおいて有効:6人、やや有効:3人、無効:1人、また肌のシワ・タルミにおいて有効:6人、やや有効:2人、無効:2人となり、ブドウ葉エキスは肌に対してハリ・ツヤを与え、さらにシワ・タルミの改善効果に有効であることが示された。
このような検証結果が明らかにされており(文献4:2003;文献5:2003)、ブドウ葉エキスにヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼおよびエラスターゼ活性抑制による抗老化作用が認められています。
ただし、ヒト試験に関しては5%濃度で実施されており、一般的な化粧品配合量は1%以下と考えられるため、試験よりもかなり穏やかな作用傾向であると考えられます。
ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗炎症作用
ヒアルロニダーゼ活性阻害による抗炎症作用に関しては、まず前提知識としてヒアルロニダーゼについて解説します。
ヒアルロニダーゼについては、すでにヒアルロニダーゼ、コラゲナーゼおよびエラスターゼ活性阻害による抗老化作用のパートで、真皮において多量の水分を保持するゲル状高分子多糖体であるヒアルロン酸を加水分解する酵素として解説しています。
さらに、ヒアルロニダーゼは炎症時において活性化され、ヒアルロン酸などの結合組織のマトリックスを破壊し、炎症時の細胞および血管の透過性を高めてしまうと考えられており、急性浮腫を惹起させる起炎剤としても使用されることからヒアルロニダーゼの活性を阻害することは、皮膚の延焼防止として有効であると考えられています(文献5:2003)。
2003年に一丸ファルコスによって公開された技術情報によると、
0.5%ブドウ葉エキスのヒアルロニダーゼ阻害率を検討するためにin vitro試験を実施したところ、以下の表のように、
濃度(%) | ヒアルロニダーゼ阻害率 |
---|---|
0.5 | 38.0 |
ブドウ葉エキスは、ヒアルロニダーゼ活性を有意に阻害する作用を有することが確認できた。
またヒト使用試験として5%ブドウ葉エキス配合乳液を湿疹・カユミ・肌荒れで悩む30人の成人女性(30~50歳)に毎日朝と夜の2回3ヶ月にわたって洗顔後に顔面に適量を塗布してもらい、3ヶ月後に評価した.
評価結果は湿疹・肌荒れ改善効果において有効:6人、やや有効:4人、無効:0人となり、ブドウ葉エキスは湿疹・カユミ・肌荒れを改善することが確認された。
このような検証結果が明らかにされており(文献5:2003)、ブドウ葉エキスにヒアルロニダーゼ活性抑制による抗炎症作用が認められています。
ただし、ヒト試験に関しては5%濃度で実施されており、一般的な化粧品配合量は1%以下と考えられるため、試験よりもかなり穏やかな作用傾向であると考えられます。
ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用
ヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用に関しては、前提知識として即時型アレルギーのメカニズムとヒスタミンについて解説します。
代表的な即時型アレルギーとしてじんま疹があり、じんま疹のイメージと以下の即時型アレルギーが起こるメカニズム図をみてもらうとわかりやすいと思いますが、
即時型アレルギー(じんま疹)は、
- 真皮に存在する肥満細胞の表面で抗原(アレルゲン)と抗体(IgE)が結びつくことで抗原抗体反応が起こる
- 抗原抗体反応によって肥満細胞が破れてヒスタミンなどの炎症因子が細胞外へ放出される
- ヒスタミンが血管の透過性を高めると、血漿成分が血管外に漏出することにより、数分後に皮膚に赤みが生じ、じんま疹が発症する
このようなプロレスを通して起こります(文献9:2002)。
もう少し詳しく解説しておくと、肥満細胞は皮膚においては真皮の毛細血管周囲くまなく分布しており、肥満細胞の表面には免疫グロブリンE(IgE抗体)という抗体が付着しています。
IgE抗体に反応する抗原(アレルゲン)が体内に侵入すると、肥満細胞の表面で抗原と抗体が結びつき、抗原抗体反応が起こることによって肥満細胞内の化学伝達物質を含む顆粒が細胞外へ放出されます。
代表的な化学伝達物質のひとつがかゆみや腫れを起こすヒスタミンで、ヒスタミンは神経を刺激してかゆみを起こし、また血管の透過性を高めるため、血漿成分が血管壁を通して血管外へ出てその周辺の皮膚にたまってむくみができ、その結果かゆみを伴った膨疹がみられるようになるというメカニズムになります。
1998年にノエビアによって公開された技術情報によると、
安全性の高い抗アレルギー剤を得るために、広く天然物よりアレルギー作用を有する物質のスクリーニングを行った結果、アセンヤクエキス、サンショウエキス、チョウジエキス、ノイバラ果実エキス、ワレモコウエキス、ビワ葉エキス、キナノキ樹皮エキス、ユキノシタエキス、シラカバ樹皮エキスまたはヨーロッパシラカバ樹皮エキス、ブドウ葉エキスの10種の植物抽出物に肥満細胞および好塩基球からのヒスタミン遊離を阻害する作用を見出した。
上記10種の1%生薬および植物抽出物のヒスタミン遊離抑制効果をラット由来好塩基球白血病細胞から遊離されるヒスタミンを指標とする抗アレルギー作用試験法を用いて評価したところ、以下のグラフのように、
各生薬および植物抽出物がヒスタミンの遊離を抑制することが明らかである。
また0.5%ブドウ葉エキス配合軟膏を17~30歳のアトピー性皮膚炎を有する女性患者18人にそれぞれ朝夕2回2週間にわたって顔に塗布し、2週間後に改善効果を5段階(顕著、有効、やや有効、無効、悪化)で評価したところ、
症例数 | 顕著 | 有効 | やや有効 | 無効 | 悪化 |
---|---|---|---|---|---|
18 | 5 | 8 | 5 | 0 | 0 |
ブドウ葉エキスはアトピー性皮膚炎の症状改善に有効であり、塗布期間中に症状の悪化した患者は一人もいなかった。
またブドウ葉エキスのみを用いてもよいが、他の9種類の植物抽出物を混合して用いることで相乗効果が期待できる。
0.001%~5%の濃度範囲とすることが望ましい。
このような検証結果が明らかにされており(文献8:1998)、ブドウ葉エキスにヒスタミン遊離抑制による抗アレルギー作用が認められています。
実際の使用製品の種類や数および配合量は、海外の2012年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。
以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。
複合植物エキスとしてのブドウ葉エキス
ファルコレックスBX43という複合植物エキスは、以下の成分で構成されており、
効果および配合目的は、
- 抗酸化(SOD様)
- 抗酸化(過酸化脂質生成抑制)
とされており、活性酸素抑制および過剰な皮脂抑制などそれぞれポイントの違う植物エキスの相乗効果によって多角的に酸化を防止するもので、化粧品成分一覧にこれらの成分が併用されている場合はファルコレックスBX43であると推測することができます。
ブドウ葉エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について
以下は、この結論にいたった根拠です。
皮膚刺激性について
一丸ファルコスの技術情報(文献4:2003)によると、
- [動物試験] 3匹の剃毛したモルモットの背部に1%ブドウ葉エキスを含む試料0.03mLを塗布し、適用24,48および72時間後に一次刺激性を評価したところ、すべてのモルモットにおいて皮膚一次刺激性は認められなかった
- [動物試験] 3匹の剃毛したモルモットの背部に1%ブドウ葉エキスを含む試料0.5mLを1日1回、週5回2週間にわたって塗布し、各塗布日および最終塗布日に皮膚累積刺激を評価したところ、すべてのモルモットにおいて塗布後2週間にわたって皮膚刺激性は認められなかった
と記載されています。
試験データをみるかぎり、共通して皮膚刺激がないため、皮膚一次刺激性および皮膚累積刺激性はほとんどないと考えられます。
眼刺激性について
試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。
皮膚感作性(アレルギー性)について
10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。
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ブドウ葉エキスは抗老化成分、抗炎症成分にカテゴライズされています。
成分一覧は以下からお読みください。
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文献一覧:
- 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,382.
- 丸善製薬株式会社(-)「アカブドウ」技術資料.
- 一丸ファルコス株式会社(2016)「ファルコレックス グレープリーフ B」技術資料.
- 一丸ファルコス株式会社(2003)「コラゲナーゼ活性阻害剤、エラスターゼ活性阻害剤及び化粧料組成物」特開2003-342123.
- 一丸ファルコス株式会社(2003)「ヒアルロニダーゼ活性阻害剤及び化粧料組成物」特開2003-342184.
- 朝田 康夫(2002)「真皮の変性と加齢の関係は」美容皮膚科学事典,132-133.
- 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
- 株式会社ノエビア(1998)「抗アレルギー剤及びこれを含有する抗アレルギー性化粧料並びに食品」特開平10-36276.
- 朝田 康夫(2002)「じんま疹の症状は」美容皮膚科学事典,276-279.
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