パルミチン酸レチノールとは…成分効果と毒性を解説

抗シワ成分 抗老化成分
パルミチン酸レチノール
[化粧品成分表示名称]
・パルミチン酸レチノール

[医薬部外品表示名称]
・パルミチン酸レチノール

[慣用名]
・ビタミンA油、レチノール誘導体

レチノール(ビタミンA)にパルミチン酸を結合してエステル化した、水に溶けずアルコールやオイルに溶ける油性のレチノール誘導体です。

レチノール誘導体には、ほかにも酢酸レチノールやレチナールなどありますが、レチノール誘導体の中でも最も刺激が少なく安定性に優れているのがパルミチン酸レチノールです。

医薬品としても角化性の皮膚疾患やニキビの治療に使用されており、化粧品として配合される場合は、真皮の保湿成分であるコラーゲンやエラスチンなどの生成を促進すると言われており、紫外線によるシワやくすみ、乾燥による小ジワなど加齢による小ジワや乾燥を防止する目的で使用されます。

油性成分なので、とろみのある美容液やクリームなどに配合されていますが、薄い小ジワは目尻が主なので、とくに目元用のアイクリームなどでよく使用されています。

実際にパルミチン酸レチノールがどのような製品にどれくらい配合されているかというと、海外の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

ちなみに表の中の製品タイプのリーブオン製品というのは付けっ放し製品という意味で、主にスキンケア化粧品やメイクアップ化粧品などを指し、リンスオフ製品というのは洗浄系製品を指します。

パルミチン酸レチノールの配合製品数と配合量の調査(1987-2005年)

パルミチン酸レチノールの配合製品数と配合量の調査(2013年)

医薬部外品の化粧品に配合される場合は、日本薬局方および医薬部外品原料規格2006の両方において以下のような配合範囲となっています。

クリーム、乳液、ハンドクリーム、化粧用油 30,000~250,000IU/100g
(250,000IUは重量換算で約0.04%)(∗1)

∗1 厚生労働省が通達した「薬用化粧品中の有効成分リスト」の中でパルミチン酸レチノールの配合範囲は30,000~250,000IUと記載されています。IUとは薬理学で用いられる国際単位であり、生体に対する効力でその量を表す単位のことで(文献2:2014)、250,000IUは重量換算で約0.04%に相当します(文献3:2006)。

また、医薬品としては500,000IU/100g(重量換算で約0.08%)の配合量で、角化性皮膚疾患への使用が認可されています(文献3:2006)

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パルミチン酸レチノールの安全性(毒性・刺激性・アレルギー)について

パルミチン酸レチノールの現時点での安全性は、皮膚刺激性はほとんどなく、一過性の軽度の眼刺激が起こる可能性がありますが、皮膚感作(アレルギー)の報告もほとんどないため、安全性の高い成分であると考えられます。

ただし、2013年に高配合を謳う化粧品で腫れ、発疹、かぶれなどの症状が相次ぎ(顧客85,000人のうち273人)、販売中止になった例があるため、高配合を謳う化粧品の使用は控えることを推奨します。

以下は、この結論にいたった根拠です。

安全性を調査するために、国内外を問わず信頼性が高いと思われる安全性データシート(∗2)やレポートを参照しています。

∗2 安全性データシートとは、化粧品製造会社や化粧品販売会社のために提供されている成分の安全性データが記載されているシートで、一般消費者向けの資料ではありませんが、安全性を考える上で重要なエビデンスのひとつとなるため、一部引用させていただいています。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Retinyl Palmitate and Retinol」(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 100人の被検者を用いて1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤を反復鎮痛パッチ試験(RIPT)で評価した。誘導期間において各被検者の上腕に保湿剤0.3mLを24時間閉塞パッチ適用し、パッチ除去24時間後にスコアリングする手順を合計10回繰り返した。2~3週間の休息期間の後、試験部位および未処置部位に24時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去24および48時間後に反応を評価したところ、99人の被検者はこの試験で炎症の兆候は観察されなかった。1人の被検者は誘導期間の8回目および9回目に異なる部位で明確な紅斑が観察された。チャレンジパッチではいずれの被検者も反応は観察されなかった。この保湿剤は皮膚一次刺激剤、疲労剤および皮膚感作剤ではないと結論づけた
  • [ヒト試験] 210人の被検者を用いて0.1%パルミチン酸レチノールを含むボディローションを反復鎮痛パッチ試験(RIPT)で評価した。誘導期間において各被検者の背部に24時間閉塞パッチを1日おきに適用し、各パッチ除去時に試験部位を評価する手順を合計10回繰り返した。10~14日の休息期間の後に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去時に評価し、さらに7~10日後に再度48時間チャレンジパッチを適用し、48および72時間後に試験部位を評価したところ、2人を除くすべての被検者が試験を通じて完全に陰性であった。2人のうち1人の被検者は誘導期間の9回および10回目のパッチの後に紅斑および丘疹を有した。この被検者はチャレンジパッチは陰性だったので、これは閉塞パッチによる刺激であると考えられた。もう1人の被検者は2回目のチャレンジパッチ72時間時の評価で紅斑および丘疹を有したが、他はすべて陰性であった。浮腫が観察されなかったことからこの反応は本質的に刺激性であると考えられた。このボディローションは強い刺激剤でも接触増感剤でもなかった
  • [ヒト試験] 189人の被検者を用いて0.1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤を反復鎮痛パッチ試験(RIPT)で評価した。誘導期間において各被検者の背中に48時間閉塞パッチを適用し、各パッチ除去時に試験部位を評価する手順を合計10回繰り返した。10~14日の休息期間の後に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去時に評価した。誘導期間およびチャレンジ期間に対する反応はすべての被検者で陰性であったため、0.1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤保湿剤は一次刺激剤およびアレルギー増感剤としての可能性を示さなかった
  • [ヒト試験] 108人の被検者を用いて0.1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤を反復鎮痛パッチ試験(RIPT)で評価した。誘導期間において各被検者の背中に試験物質0.1gを含む閉塞パッチを24時間適用し、反応は48時間で評価した。この手順を週3回合計10回繰り返した。2週間の休息期間の後に試験部位と未処置部位の2箇所に48時間チャレンジパッチを適用し、パッチ除去時に評価した。誘導期間およびチャレンジ期間に対する反応は1人を除いたすべての被検者で陰性であった。この1人の被検者は未処置部位のチャレンジパッチで軽度の紅斑が観察されたが、他はすべて陰性であった。この保湿剤は刺激剤およびアレルギー増感剤ではなかったと結論づけられた
  • [個別事例] 55歳の女性にヨーロッパ標準のパッチテストを実施したところ、ニッケルのみ陽性反応を示した。またこの女性はジュエリーにアレルギー反応を示した。20の物質を含む医薬品および化粧品の試験では陰性であった。彼女が使用した薬剤でテストしたところ、麻酔薬で陽性反応がみられたため、このクリームの個々の成分を試験したところ、パルミチン酸レチノールで陽性反応を示した。酸化防止剤として使用されるブチルヒドロキシアニソールおよびブチルヒドロキシトルエンだけでなく、純粋なパルミチン酸レチノールを用いた試験では純粋なパルミチン酸レチノールに対してのみ陽性であった。他の20人の患者で純粋なパルミチン酸レチノールは陰性であった。この試験結果からパルミチン酸レチノールに微量のニッケルが含まれている可能性があると考えられた

と記載されています。

試験データをみるかぎりでは、共通して皮膚刺激および皮膚感作性がないため、皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

個別事例としてパルミチン酸レチノールにニッケルが含まれている可能性が示唆されていますが、事例が1例のみであること、日本でもニッケルアレルギーの割合は比較的多いにもかかわらずパルミチン酸レチノールでの感作反応報告がみあたらないこと、また他にニッケルアレルギーとパルミチン酸レチノールの関係性を指摘する報告がないことから現時点ではこの事例は参考外とします。

眼刺激性について

“Cosmetic Ingredient Review”の「Final Report on the Safety Assessment of Retinyl Palmitate and Retinol」(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 12匹のウサギを用いてそれぞれ6匹の群の片眼に0.1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤またはボディローションをそれぞれ0.1mLを点眼し、反応を評価したところ、1時間ですべてのウサギの眼に軽度の結膜の赤みが認められた。保湿剤を点眼した眼は24~48時間以内に正常に回復し、ボディローションで点眼した眼は24時間以内に正常に回復した。角膜および虹彩膜は影響を受けなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して一過性の軽度の眼刺激が報告されているため、眼刺激は一過性の軽度の眼刺激が起こると考えられます。

安全性についての捕捉

ビタミンAが不足している肌(新陳代謝が遅くなっている肌)に、急に多くのビタミンAが補給されて新陳代謝が促進されると、一時的に乾燥感、皮剥け、赤み、かゆみなどが生じることがあり、この一時的な症状はレチノイド反応と呼ばれています(文献4:2015)

レチノイド反応は、毒性反応でもアレルギー反応でもなく、ほとんどの場合で皮膚がビタミンAに慣れるに従い自然におさまります。

ただし、実際にはレチノール反応が起こるケースは少なく、たとえば肌に赤みがみられる場合は皮膚刺激の可能性もあるため、皮膚に異常を感じた場合は速やかに皮膚専門医に相談することを推奨します。

また、2013年12月15日には、第一三共ヘルスケアのパルミチン酸レチノール配合化粧品「ダーマエナジー」を使用した顧客から腫れ、発疹、かぶれなど肌トラブルが起きたとの問い合わせが相次いだことで、「ダーマエナジー」の販売が終了したという事実があります(文献5:2013)

詳細を調査していくと、「ダーマエナジー」のトライアルセットのいずれかを使用した顧客が85,000人で肌トラブルが起きた(医療受診した)のは273人であり、原因とみられるのはパルミチン酸レチノールを高配合した美容液である可能性が高いという見方が濃厚でした。

高配合といっても使用基準以内であったようですが、他のパルミチン酸レチノール配合化粧品では同様のトラブル報告はないため、高配合を謳うパルミチン酸レチノールの使用には注意が必要だと考えられます。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
パルミチン酸レチノール 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、パルミチン酸レチノールは毒性なし(∗3)となっており、毒性に関しては心配する必要はありません。

∗3 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

パルミチン酸レチノールは抗シワ(抗老化)成分にカテゴライズされています。

それぞれの成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗シワ(抗老化)成分一覧

∗∗∗

文献一覧:

  1. “Cosmetic Ingredient Review”(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Retinyl Palmitate and Retinol」, <http://journals.sagepub.com/doi/abs/10.3109/10915818709098562> 2018年3月31日アクセス.
  2. “Wikipedia”(2014)「国際単位」, <https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9B%BD%E9%9A%9B%E5%8D%98%E4%BD%8D> 2018年3月31日アクセス.
  3. 日光ケミカルズ(2006)「ビタミン」新化粧品原料ハンドブックⅠ,p412-414.
  4. “Aケア協会”(2015)「ビタミンAとレチノイド反応(A反応)」, <https://a-care.net/feature/get_along/> 2018年3月31日アクセス.
  5. “週刊通販新聞”(2013)「第一三共ヘルスケア 通販化粧品で肌トラブル、販売終了も「通販撤退ない」」, <http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2013/12/post-1713.html> 2018年3月31日アクセス.

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