パルミチン酸レチノールとは…成分効果と毒性を解説

抗シワ成分
パルミチン酸レチノール
[化粧品成分表示名称]
・パルミチン酸レチノール

[医薬部外品表示名称]
・パルミチン酸レチノール

[慣用名]
・安定型ビタミンA誘導体

レチノールに高級脂肪酸であるパルミチン酸を結合してエステル化した油溶性(脂溶性)ビタミンA誘導体です。

レチノールは、表皮ヒアルロン酸合成促進、真皮コラーゲン産生促進およびターンオーバー促進効果などを有しており、とくにシワへの効果が知られ、欧米では医薬品としても認可されていますが、その一方で、熱、光、酸素、金属イオンに対して非常に不安定な性質を有しています。

パルミチン酸レチノールは、安定型ビタミンA誘導体と呼ばれているように、レチノールを安定化するためにパルミチン酸を結合したものであり、またヒト生体内においてレチノールはパルミチン酸レチノールの形で貯蔵されており(文献5:2011)、以下のように、

パルミチン酸レチノール → レチノール → レチナール → レチノイン酸(トレチノイン)

このように酸化による変換を経て、レチノールおよびレチノイン酸の生理活性を発揮することが知られています(文献6:2003)

つまり、パルミチン酸レチノールの主な作用は、皮膚内で加水分解を受けることによるレチノール(最終的にレチノイン酸まで変換される)の作用です。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、アイケア化粧品、リップケア製品、ハンドケア製品、日焼け止め製品、メイクアップ製品、シート&マスク製品、ネイル製品などに使用されています。

抗シワ作用

抗シワ作用に関しては、まず前提知識としてレチノールの作用・効果について解説します。

パルミチン酸レチノールの主な作用メカニズムは、すでに解説したように皮膚内でのレチノール(最終的にレチノイン酸)への変換と考えられており、一部パルミチン酸レチノール自体の作用を有していることも考えられますが、基本的にはレチノールの作用であると考えられます。

皮膚内で代謝されるため、すべてのパルミチン酸レチノールが皮内浸透し、レチノールに変換されるのではなく、最終的にレチノールとしての効果を発揮するのは一部であると考えられるため、レチノールとしての効果はレチノールそのものよりかなり穏やかであると考えられます。

2013年にAVRコンサルティングによって報告されたパルミチン酸レチノールのシワへの影響検証によると、

パルミチン酸レチノール配合保湿剤の光老化への影響を検討した。

パルミチン酸レチノール配合保湿剤処置群および無処置群の皮膚状態の変化を12週にわたって記録し、紫外線ダメージにおける顔および首の評価を実施した。

その結果、無処置群と比較して、パルミチン酸レチノール配合保湿剤は、細いシワ、粗いシワ、皮膚の硬さやざらつきを改善することが確認された。

また改善は2週間後から観察された。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2013)、パルミチン酸レチノールに抗シワ作用が認められています。

抗シワ作用が認められるヒト臨床試験結果は複数報告されていますが、パルミチン酸レチノールの作用メカニズムが、レチノールの生理活性によるものなのか、またはパルミチン酸レチノール固有のものなのかは明らかにされて(みつけられて)いないため、作用メカニズムはわかりしだい追補します。

ただし、皮膚内でレチノールに変換されることは明らかになっているため、基本的にはレチノールの作用である表皮ヒアルロン酸の合成促進による抗シワ作用であると考えられます。

パルミチン酸レチノールは医薬部外品(薬用化粧品)への配合において配合上限があり、配合範囲は以下になります。

種類 配合量 その他
薬用石けん・シャンプー・リンス等、除毛剤 250,000IU IUは、100gに対して配合する当該成分の国際単位を表す。(∗1)
育毛剤 250,000IU
その他の薬用化粧品、腋臭防止剤、忌避剤 250,000IU
薬用口唇類 250,000IU
薬用歯みがき類 250,000IU
浴用剤 250,000IU

∗1 IU(国際単位)とは、薬理学で用いられる、生体に対する効力の量を表す単位であり(文献2:-)、250,000IUは重量換算で約0.04%に相当します(文献3:2006)。また、医薬品としては500,000IU(重量換算で約0.08%)の配合量で、角化性皮膚疾患への使用が認可されています(文献3:2006)。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の1981年および2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

パルミチン酸レチノールの配合製品数と配合量の調査(1981年および2013年)

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パルミチン酸レチノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

パルミチン酸レチノールの現時点での安全性は、

  • 医療上汎用性があり有効性および安全性の基準を満たした成分が収載される日本薬局方に収載
  • 外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載
  • 10年以上の使用実績
  • 生体内に存在する成分
  • 皮膚刺激性:ほとんどなし-わずか
  • 眼刺激性:ほとんどなし
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [ヒト試験] 100人の被検者に1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、99人の被検者はこの試験で炎症の兆候は観察されなかった。1人の被検者は誘導期間の8回目および9回目に異なる部位で明確な紅斑が観察された。チャレンジパッチではいずれの被検者も反応は観察されなかった。この保湿剤は皮膚一次刺激剤、疲労剤および皮膚感作剤ではなかった(Biosearch Inc,1983)
  • [ヒト試験] 210人の被検者に0.1%パルミチン酸レチノールを含むボディローションを対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を閉塞パッチにて実施したところ、2人を除くすべての被検者は陰性であった。2人のうち1人の被検者は誘導期間の9回および10回目のパッチの後に紅斑および丘疹を有した。この被検者はチャレンジパッチは陰性だったので、これは閉塞パッチによる刺激であると考えられた。もう1人の被検者は2回目のチャレンジパッチ72時間時の評価で紅斑および丘疹を有したが、他はすべて陰性であった。浮腫が観察されなかったことからこの反応は本質的に刺激性であると考えられた。このボディローションは強い刺激剤でも接触増感剤でもなかった(Leo Winter Associates,1979)
  • [ヒト試験] 189人の被検者に0.1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、すべての被検者で陰性であったため、0.1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤は一次刺激剤およびアレルギー増感剤としての可能性を示さなかった(Leo Winter Associates,1974)
  • [ヒト試験] 108人の被検者をに0.1%パルミチン酸レチノールを含む保湿剤を対象にHRIPT(皮膚刺激&感作試験)を実施したところ、1人を除いたすべての被検者で陰性であった。この1人の被検者は未処置部位のチャレンジパッチで軽度の紅斑が観察されたが、他はすべて陰性であった。この保湿剤は刺激剤およびアレルギー増感剤ではなかったと結論づけられた(CTFA,1979)
  • [ヒト試験] 12人の被検者をに0.1%パルミチン酸レチノールを含むボディローションを対象に21日間累積刺激性試験を実施したところ、累積刺激スコア(最大630)は58であった。この試験物質は通常使用においておそらく軽度の累積刺激剤であると考えられた(CTFA,1984)

– 個別事例 –

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [個別事例] ジュエリーにアレルギー反応を有する55歳の女性に20の物質によるヨーロッパ標準パッチテストを実施したところ、ニッケルのみ陽性反応を示した。20の物質を含む医薬品および化粧品の試験では陰性であった。彼女が使用している薬でテストしたところ、医師処方薬で陽性反応がみられたため、このクリームの個々の成分を試験したところ、パルミチン酸レチノール溶液でのみ陽性反応を示した。他の20人の患者で純粋なパルミチン酸レチノールのパッチテストを実施したところ、すべての患者において陰性であった。この試験結果からパルミチン酸レチノールに微量のニッケルが含まれている可能性があると報告された(A Blondeel,1984)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、数件のわずかな皮膚刺激が報告されており、また皮膚感作性なしと報告されているため、一般的に皮膚刺激性はほとんどなし-わずかな皮膚刺激が起こる可能性があり、また皮膚感作性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:1987)によると、

  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.1%パルミチン酸レチノールを含むボディローション0.1mLを点眼し、眼刺激性を評価したところ、1時間ですべてのウサギの眼に軽度の結膜の赤みが認められたが24時間以内に正常に回復した。角膜および虹彩膜は影響を受けなかった(CTFA,1976)
  • [動物試験] 6匹のウサギの片眼に0.1%パルミチン酸レチノールを含むh保湿剤0.1mLを点眼し、眼刺激性を評価したところ、1時間ですべてのウサギの眼に軽度の結膜の赤みが認められたが24-48時間以内に正常に回復した。角膜および虹彩膜は影響を受けなかった(CTFA,1977)

と記載されています。

試験データをみるかぎり、共通して眼刺激性なしと報告されているため、一般的に眼刺激性はほとんどないと考えられます。

安全性についての補足

2013年12月12日に、パルミチン酸レチノール配合化粧品を使用した顧客から腫れ、発疹、かぶれなど肌トラブルが起きたとの問い合わせが相次いだことで、パルミチン酸レチノール配合化粧品の販売が終了したという事実が以下のように公表されました(文献4:2013)

調査によると、この製品はパルミチン酸レチノールを部外品基準(17-25万IU)(∗2)で高濃度に配合しており、販売開始の2012年7月-2013年12月の期間で配合化粧品の使用者数約85,000人のうち肌トラブルの問い合わせは発売直後から寄せられ、合計で273人(0.3%)が医療機関で受診している。

∗2 25万IUは重量換算で約0.04%。

これを多いと捉えるかは各販売メーカーにより判断が分かれるが、顧客数の増加に応じてトラブルも急増したため、今回は販売終了および返品・返金の対応となった。

ただし、パルミチン酸レチノール自体は医薬部外品として承認されている成分であり、また高濃度配合とはいえ医薬部外品基準範囲内であり、今回のケースでは、高濃度で配合し、さらに肌への浸透性を高める乳化技術を使っていたことが肌トラブル増加の原因となった可能性が考えられる。

厚生労働省では「他の製品でも広く起こっているという症例報告は受けておらず、全体の発生率は多くない。新規成分でもなく、製品の特性や品質、使い方、濃度の問題かどうかはっきりした上で部外品基準の変更は検討する」としている。

通販新聞(2013年12月12日)より引用・一部改変

他のパルミチン酸レチノール配合化粧品ではこのような報告がないことから、この製品固有の症例と考えられますが、パルミチン酸レチノールにおいて「高濃度配合」「浸透技術」などをプロモーションする製品を使用する際は、事前にパッチテストをして皮膚反応の確認を行うことを推奨します。

∗∗∗

パルミチン酸レチノールは抗老化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗老化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(1987)「Final Report on the Safety Assessment of Retinyl Palmitate and Retinol」International Journal of Toxicology(6)(3),279-320.
  2. “Wikipedia”(-)「国際単位」, <https://ja.wikipedia.org/wiki/国際単位> 2018年3月31日アクセス.
  3. 日光ケミカルズ(2006)「ビタミン」新化粧品原料ハンドブックⅠ,412-414.
  4. “週刊通販新聞”(2013)「第一三共ヘルスケア 通販化粧品で肌トラブル、販売終了も「通販撤退ない」」, <http://www.tsuhanshinbun.com/archive/2013/12/post-1713.html> 2018年3月31日アクセス.
  5. M E Burnett, et al(2011)「Current sunscreen controversies: a critical review」Photodermatology, Photoimmunology, Photomedicine(27)(2),58-67.
  6. P P Fu, et al(2003)「Photoreaction, Phototoxicity, and Photocarcinogenicity of Retinoids」Journal of Environmental Science and Health, Part C(21)(2),165-197.
  7. A V Rawlings, et al(2013)「The effect of a vitamin A palmitate and antioxidant‐containing oil‐based moisturizer on photodamaged skin of several body sites」Journal of Cosmetic Dermatology(12)(1),25-35.

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