トコトリエノールとは…成分効果と毒性を解説

抗酸化成分 抗老化成分 酸化防止
トコトリエノール
[化粧品成分表示名称]
・トコトリエノール

[慣用名]
・スーパービタミンE

パーム油米胚芽油および小麦胚芽油から抽出・精製して得られる、トコフェロールに類似した化学構造をもつ油溶性のビタミンE同族体です(文献2:1981)

トコフェロールと同様にα,β,γおよびδの4つの異性体が存在し、植物油中の含有量は一例として以下の表のように、

植物油 含有量(μg/g)
トコトリエノール トコフェロール
α β γ δ α β γ δ
パーム油 143 32 286 69 256 316 70
パーム油 274 398 69 279 61
パーム油 205 439 94 152
米ぬか油 236 349 324 18 53
小麦胚芽油 24 165 1179 398 493 118

トコトリエノールはトコフェロールと混合して存在しており、植物油中においてはγ体およびα体の含有量が多いことが明らかとなっています(文献3:2001)

ビタミンEは、トコフェロールとトコトリエノールに分類され、トコフェロールとトコトリエノールの違いは、以下の表のように、

  トコトリエノール トコフェロール
二重結合 3つ なし
抗酸化タイプ 速効型 持続型

化学構造的に二重結合の有無であり、トコトリエノールは二重結合が3つあるため、非常に不安定で酸化しやすく、抗酸化作用という点ではすぐに酸化する(抗酸化作用を発揮する)ため、速効型ともいえます。

トコトリエノールの生理活性は、トコフェロールと同様に抗酸化作用が主であり、ラット肝ミクロゾーム膜で脂質過酸化を誘導した試験において、α-トコトリエノールはα-トコフェロールより40-60倍強く脂質過酸化を抑制し(文献4:1991)、またγ-トコトリエノールが30.1%抑制した条件下でα-トコフェロールは16.5%といったデータから(文献5:1997)、トコトリエノールはスーパービタミンEとも呼ばれています。

また、このトコトリエノールの抗酸化力は、二重結合を3つもっていることによる活性の高さにあります。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、ハンド&ボディケア製品、メイクアップ化粧品、日焼け止め製品、洗顔料&洗顔石鹸、洗浄製品、シート&マスク製品など様々な製品に使用されています(文献1:2014)

トコトリエノールは、相乗効果・補完効果目的でトコフェロールが併用されることも多く、さらにコメヌカ油(トコトリエノールおよびトコフェロールを含有)も併用していることもあります。

過酸化水素に対する細胞保護・抗酸化作用

過酸化水素に対する細胞保護・抗酸化作用に関しては、まず前提知識として生体内における活性酸素の構造について解説します。

生体内における活性酸素は以下のように、

酸素(O₂) → スーパーオキシド(O₂⁻) → 過酸化水素(H₂O₂) → ヒドロキシラジカル(・OH)

最初に酸素と反応(電子を取り込む)して、まず活性酸素のスーパーオキシドを発生させ、発生したスーパーオキシドは活性酸素分解酵素であるSOD(スーパーオキシドディスムターゼ)によって水に分解されますが、その過程で活性酸素である過酸化水素が発生します。

発生した過酸化水素は、過酸化水素分解酵素であるカタラーゼによって、また抗酸化物質であるグルタチオンを用いてグルタチオンペルオキシターゼによって水に分解されますが、それでも処理できない場合はヒドロキシラジカルを発生させます。

2004年にオリザ油化、日光ケミカルズおよびコスモステクニカルセンターによって報告されたトコトリエノールの皮膚における有用性検証によると、

表皮細胞を用いた評価系において過酸化水素(H₂O₂)を用いて酸化ストレスを誘導し、酸化障害に対する細胞の生存率を調べた。

その結果、未添加の場合が60%の生存率であったのに対し、コメ由来トコトリエノール添加では78%の生存率であった。

コメ由来トコトリエノールの添加によって酸化ストレスによる細胞死がよくせいされることが確認された。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2004)、トコトリエノールに過酸化水素に対する細胞保護・抗酸化作用が認められています。

線維芽細胞増殖およびヒアルロン酸産生促進による抗老化作用

線維芽細胞増殖およびヒアルロン酸産生促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として真皮の構造・役割と線維芽細胞およびヒアルロン酸について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はプロテオグリカン(ヒアルロン酸およびコンドロイチン硫酸含む)・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

真皮において細胞外マトリックスを構成するコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸は、同じく真皮に点在する線維芽細胞から産生されるため、線維芽細胞が活発に働くことでこれらが正常につくられていることが皮膚のハリ・弾力維持において重要です(文献7:2002)

2004年にオリザ油化、日光ケミカルズおよびコスモステクニカルセンターによって報告されたトコトリエノールの皮膚における有用性検証によると、

ヒト線維芽細胞を前培養後、コメ由来トコトリエノールを添加し、さらに培養したうえで細胞の増殖率を評価したところ、以下のグラフのように、

コメ由来トコトリエノールの皮膚線維芽細胞増殖効果

0.025%コメ由来トコトリエノールの添加により、ヒト皮膚線維芽細胞は最大増殖率を示し、無添加と比較して123%の増殖率が認められた。

次にヒト真皮線維芽細胞を用いてコメ由来トコトリエノールを添加し48時間培養後に細胞内ヒアルロン酸量を定量したところ、以下のグラフのように、

コメ由来トコトリエノールのヒアルロン酸産生効果

コメ由来トコトリエノールは0.00078%-0.05%濃度においてヒアルロン酸の産生促進を示した。

この結果からコメ由来トコトリエノールは非常に低濃度において高いヒアルロン酸産生作用を有することが明らかになった。

このような検証結果が明らかにされており(文献6:2004)、トコトリエノールに線維芽細胞増殖およびヒアルロン酸産生促進による抗老化作用が認められています。

製品自体の酸化防止

製品自体の酸化防止に関しては、トコトリエノールは天然に存在する抗酸化物質であり、製品中の酸化しやすい成分の代わりにトコトリエノールが酸化されることにより、製品そのものの酸化を防止するというメカニズムがあります。

そのため、製品そのものの酸化防止目的で配合されることがあります。

実際の配合製品数および配合量に関しては、海外の2013年の調査結果になりますが、以下のように報告されています。

以下表におけるリーブオン製品は、付けっ放し製品(スキンケア製品やメイクアップ製品など)を表しており、またリンスオフ製品というのは、洗い流し製品(シャンプー、洗顔料、クレンジングなど)を指します。

トコトリエノールの配合製品数と配合量の調査(2013年)

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トコトリエノールの安全性(刺激性・アレルギー)について

トコトリエノールの現時点での安全性は、

  • 10年以上の使用実績
  • 皮膚刺激性:5%濃度以下においてほとんどなし
  • 眼刺激性:詳細不明
  • 皮膚感作性(アレルギー性):ほとんどなし

このような結果となっており、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に安全性に問題のない成分であると考えられます。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

Cosmetic Ingredient Reviewの安全性データ(文献1:2014)によると、

  • [ヒト試験] 30人の被検者の背中に0%,1%,2.5%,5%,7.5%,10%および20%トコトリエノールを含むワセリンを48時間Finn Chamber適用し、ICDRG(国際接触皮膚炎研究グループ)の方法に準じて適用48および96時間後に評価したところ、48または96時間で1%,2.5%または5%濃度で刺激反応は観察されなかった。しかし、7.5%濃度で疑わしい紅斑が観察され、20%濃度では明瞭な紅斑まで濃度が高くなるほど反応の程度も高くなった。これらの結果から5%未満の濃度ではヒト反復傷害パッチ試験において刺激物質または感作物質ではなかったが、高濃度で刺激反応が観察された
  • [ヒト試験] 25人の被検者に2.5%および5%トコトリエノールを含むワセリンを誘導期間において24時間閉塞パッチを適用し、各パッチ除去30分後に試験部位を評価し、再パッチを適用する手順を21日間繰り返し、2週間の無処置期間を設けた後に未処置部位に48時間チャレンジパッチを適用した。パッチ除去48および96時間後に部位を評価したところ、2.5%および5%の両方で無添加溶液よりも低い累積刺激スコアを有した。チャレンジパッチ後に2人の被検者が48時間の評価で一時的な反応を示したが、96時間後には反応は観察されなかった

と記載されています。

試験データをみるかぎり、5%濃度以下において皮膚刺激性および皮膚感作性なしと報告されているため、皮膚刺激および皮膚感作が起こる可能性はほとんどないと考えられます。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

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トコトリエノールは抗酸化成分、抗老化成分、安定化成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗酸化成分 抗老化成分 安定化成分

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文献一覧:

  1. Cosmetic Ingredient Review(2014)「Safety Assessment of Tocopherols and Tocotrienols as Used in Cosmetics」Final Amended Report.
  2. A Kato, et al(1981)「Esterified α-Tocopherol and Tocotrienols in Palm oils」油化学(30)(9),590-591.
  3. 湊 貞正(2001)「トコトリエノールの機能と健康食品への応用」Fragrance Journal(29)(2),43-48.
  4. E Serbinova, et al(1991)「Free radical recycling and intramembrane mobility in the antioxidant properties of alpha-tocopherol and alpha-tocotrienol.」Free Radical Biology and Medicine(10)(5),263-275.
  5. J P Kamat, et al(1997)「Tocotrienols from palm oil as effective inhibitors of protein oxidation and lipid peroxidation in rat liver microsomes.」Molecular and Cellular Biochemistry(170)(1-2),131-137.
  6. 白崎 友美(2004)「米由来トコトリエノールの新たな機能と化粧品への応用」Fragrance Journal(32)(2),74-78.
  7. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30-31.

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