ダイズ種子エキスとは…成分効果と毒性を解説

抗老化成分 保湿成分 美白成分
ダイズ種子エキス
[化粧品成分表示名称]
・ダイズ種子エキス

[医薬部外品表示名称]
・ダイズエキス

マメ科植物ダイズ(学名:Glycine max 英名:Soybean)の種子からで抽出して得られるエキスです。

ダイズ種子エキスの成分組成は、抽出方法や天然成分のため国や地域および時期によって変化がありますが、主に、

  • イソフラボン類:ゲニスチン、ダイジン
  • ソヤサポニン

などで構成されています(文献1:2006;文献2:2011)

大豆は中国原産で、世界各地で栽培されており、日本でもマメといえば大豆を指すように食生活には欠かせないものとなっています。

平安時代に完成された日本最古の医学全書である「医心方(食養篇)」には、五穀中胡麻の次に挙げられ、煮汁を服用することですべての毒を去るといい、食中毒、薬害、産後の病気やむくみを除き、胃腸を整えうっ血を散らすと紹介されています。

ダイズ種子の成分は、イソフラボン類としてゲニスチンやダイジン、サポニンの他にもタンパク質や脂肪、鉄分、カルシウムなど、ミネラルを多く含んでいます(文献2:2011)

イソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンに似た化学構造をもち、女性ホルモン様作用を示すことが知られています。

化粧品に配合される場合は、

これらの目的で、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、ボディケア製品、ヘアケア製品、洗顔料&洗顔石鹸、シート&マスク製品など様々な製品に使用されます(文献1:2006;文献3:1998;文献7:2006;)

コラーゲン代謝活性促進による抗老化作用

コラーゲン代謝活性促進による抗老化作用に関しては、まず前提知識として皮膚におけるコラーゲンの役割について解説します。

以下の皮膚の構造図をみてもらうとわかるように、

皮膚の構造と皮膚の主要成分図

皮膚は大きく表皮と真皮に分かれており、表皮は主に紫外線や細菌・アレルゲン・ウィルスなどの外的刺激から皮膚を守る働きと水分を保持する働きを担っており、真皮はヒアルロン酸・コラーゲン・エラスチンで構成された細胞外マトリックスを形成し、水分保持と同時に皮膚のハリ・弾力性に深く関与しています。

コラーゲンは、細胞外マトリックスの主成分であり、膠質状の性質を持つ白い紐状のタンパク質からなる丈夫な太い繊維で、内部にたっぷりと水分を抱えながら皮膚のハリを支えています(文献4:2002)

女性においては更年期に入ると、エストロゲンを含む女性ホルモンの分泌量が低下し、それにともない皮膚においてはヒアルロン酸やコラーゲンの合成量が低下することが知られています。

一方で、ダイズ種子に含まれるイソフラボンは、女性ホルモンであるエストロゲンに似た化学構造をもち、女性ホルモン様を示すことが知られており、エストロゲンは皮膚においては線維芽細胞に働きかけ、コラーゲンやヒアルロン酸の合成を活性化することが明らかにされています(文献5:1981;文献6:1977)

1998年に一丸ファルコスが報告した技術情報によると、

ダイズ抽出物がラット皮膚のコラーゲン組成に与える効果を解析するために、2%ダイズ抽出物を含む試料、無添加試料および陽性対照である女性ホルモン混合物(β-エストラジオール:ジエチルスチルベストロール = 1:1)をそれぞれ5匹のラット背部に週5回3週間連続塗布した。

最終塗布から48時間後に皮膚を分離し、さらにコラーゲンを架橋度によって易溶性(低架橋度)、可溶性(中架橋度)および難溶性(強架橋度)に分別し、全コラーゲン(低架橋度+中架橋度+強架橋度)量に対する低架橋度コラーゲンの割合を定量したところ、以下のグラフのように、

皮膚コラーゲン組成に対するダイズ抽出物の効果

ダイズ抽出物および陽性対照の女性ホルモンともにラット皮膚に塗布することによって皮膚中の低架橋コラーゲン比率が増加する傾向が示された。

加齢に伴って架橋度の高い難溶性コラーゲンの量が増加することは知られており、ダイズ抽出物は皮膚中のコラーゲンの代謝活性を向上させ、皮膚の老化を抑制する作用が期待できると考えられた。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:1998)、ダイズ種子エキスにコラーゲン代謝活性促進による抗老化作用が示唆されています。

セラミド合成促進による保湿作用

セラミド合成促進による保湿作用に関しては、まず前提知識としてセラミドについて解説します。

以下の角質層の構造および細胞間脂質におけるラメラ構造図をみてもらうとわかりやすいと思うのですが、

角質層の構造

細胞間脂質におけるラメラ構造の仕組み

角質層のバリア機能は、生体内の水分蒸散を防ぎ、外的刺激から皮膚を防御する重要な機能であり、バリア機能には角質と角質の隙間を充たして角質層を安定させる細胞間脂質が重要な役割を果たしています。

細胞間脂質は、主にセラミド、コレステロール、遊離脂肪酸などで構成され、これらの脂質が角質細胞間に層状のラメラ構造を形成することによりバリア機能を有すると考えられています。

セラミドは、細胞間脂質の50%以上を占める主要成分であり、皮膚の水分保持能およびバリア機能に重要な役割を果たしており、バリア機能が低下している皮膚では角質層中のセラミド量が低下していること(文献8:1989)、またアトピー性皮膚炎患者では角質層中のコレステロール量の減少は認められないがセラミド量は有意に低下していることが報告されています(文献9:1991;文献10:1998)

またヒト皮膚には7系統のセラミドが存在することが確認されており、全種類のセラミドが角質層に存在する比率で補われることが理想的ですが、セラミドを適正な比率で補充することは技術的に困難なため、生体内におけるセラミド合成を促進することが重要であると考えられています。

2006年に日本メナード化粧品によって公開された技術情報によると、

生体内におけるセラミド合成を促進する成分・物質を検討したところ、コメクズアンズスイカズラユキノシタ、テンチャ、ラフマ、サンザシイザヨイバラ、エゾウコギ、ナツメシソオウレンサイシン、コガネバナ、キハダクワボタンシャクヤクチンピムクロジチョウジユリ、ダイズ、シロキクラゲの抽出物によりセラミド合成が促進されることを見出した。

in vitro試験において、マウスケラチノサイト由来細胞を培養した培地を用いて、試料未添加のセラミド合成促進率を100とした場合の試料添加時のセラミド合成促進量を計測したところ、以下の表のように、

試料 抽出方法 10μg/mLあたりのセラミド合成促進率(%)
コメ 熱水 110
エタノール 115
クズ 熱水 133
エタノール 145
アンズ 50%BG水溶液 123
エタノール 137
スイカズラ 熱水 116
エタノール 122
ユキノシタ 熱水 121
テンチャ エタノール 115
ラフマ エタノール 114
サンザシ 50%BG水溶液 130
イザヨイバラ 熱水 112
エタノール 115
エゾウコギ 熱水 129
ナツメ 熱水 162
エタノール 152
シソ エタノール 187
オウレン 熱水 150
サイシン 熱水 145
エタノール 165
コガネバナ 50%BG水溶液 118
熱水 121
キハダ 熱水 178
エタノール 195
クワ 熱水 129
エタノール 145
ボタン 熱水 116
50%BG水溶液 126
シャクヤク 熱水 112
チンピ 熱水 111
エタノール 117
ムクロジ エタノール 115
チョウジ 熱水 114
ユリ 50%BG水溶液 115
ダイズ エタノール 120
熱水 129
シロキクラゲ 熱水 125

ダイズ抽出物は、無添加と比較してセラミド合成促進効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献7:2006)、ダイズ種子エキスにセラミド合成促進による保湿作用が認められています。

メラニン生合成抑制による色素沈着抑制作用

メラニン生合成抑制による色素沈着抑制作用に関しては、まず前提知識としてメラニン生合成のメカニズムについて解説します。

以下のメラニン生合成のメカニズム図をてみもらうとわかりやすいと思うのですが、

紫外線におけるメラニン生合成までのプロセス

紫外線を浴びるとまず最初に活性酸素が発生し、様々な情報伝達物質(メラノサイト活性化因子)をメラノサイトで発現するレセプター(受容体)に届けることで、メラノサイト内でメラニンの生合成がはじまり、ユウメラニン(黒化メラニン)へと合成されます。

メラノサイト内でのメラニン生合成は、まずアミノ酸であるチロシンに活性酵素であるチロシナーゼが結合することでドーパ、ドーパキノンへと変化し、最終的に黒化メラニンが合成されます。

1998年に一丸ファルコスが報告した技術情報によると、

in vitro試験において培養B16メラノーマ細胞に0.0025%ダイズ抽出物を添加し、また陽性対照としてコウジ酸アルブチンアスコルビン酸を同一条件で添加し3日間培養後にそれぞれのメラニン量を測定したところ、以下のグラフのように、

ダイズ抽出物のメラニン生成抑制効果

ダイズ抽出物は、アルブチンとほぼ同程度でアスコルビン酸やコウジ酸よりも強いメラニン生成抑制効果を示した。

このような検証結果が明らかにされており(文献3:1998)、ダイズ種子エキスにメラニン生合成抑制による色素沈着抑制作用が認められています。

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ダイズ種子エキスの安全性(刺激性・アレルギー)について

ダイズ種子エキスの現時点での安全性は、外原規2006規格の基準を満たした成分が収載される医薬部外品原料規格2006に収載されており、また10年以上の使用実績があり、化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられます。

ただし、詳細な試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

以下は、この結論にいたった根拠です。

皮膚刺激性および皮膚感作性(アレルギー性)について

化粧品配合量および通常使用下において、一般的に皮膚刺激および皮膚感作性(アレルギー性)はほとんどないと考えられますが、詳細な安全性試験データがみあたらず、データ不足のため詳細は不明です。

眼刺激性について

試験結果や安全性データがみあたらないため、現時点ではデータ不足により詳細は不明です。

化粧品毒性判定事典による毒性判定について

化粧品成分名 判定
ダイズ種子エキス 毒性なし

参考までに化粧品毒性判定事典によると、ダイズ種子エキスは毒性なし(∗1)となっており、安全性に問題ない成分であると考えられます。

∗1 毒性判定事典の毒性レベルは「毒性なし」「△」「■」「■■」となっており、△は2~3個で■1個に換算し、■が多いほど毒性が強いという目安になり、製品の毒性成分の合計が■4つ以上なら使用不可と判断されます。

∗∗∗

ダイズ種子エキスは抗老化成分、保湿成分、美白成分にカテゴライズされています。

成分一覧は以下からお読みください。

参考:抗老化成分 保湿成分 美白成分

∗∗∗

文献一覧:

  1. 日光ケミカルズ(2006)「植物・海藻エキス」新化粧品原料ハンドブックⅠ,375.
  2. 鈴木 洋(2011)「大豆(だいず)」カラー版健康食品・サプリメントの事典,102-104.
  3. 小島 弘之, et al(1998)「最近の植物抽出物―コーヒーとダイズ抽出液」Fragrance Journal(26)(12),75-80.
  4. 朝田 康夫(2002)「真皮の構造は」美容皮膚科学事典,30.
  5. Uzuka M, et al(1981)「Induction of hyaluronic acid synthetase by estrogen in the mouse skin.」Biochim Biophys Acta(673)(4),387-393.
  6. LARRY M. WAHL, et al(1977)「Effect of Hormones on Collagen Metabolism and Collagenase Activity in the Pubic Symphysis Ligament of the Guinea Pig.」Endocrinology(100)(2),571–579.
  7. 日本メナード化粧品株式会社(2006)「セラミド合成促進剤」特開2006-111560.
  8. G Grubauer, et al(1989)「Transepidermal water loss:the signal for recovery of barrier structure and function.」The Journal of Lipid Research(30),323-333.
  9. Imokawa G, et al(1991)「Decreased level of ceramides in stratum corneum of atopic dermatitis: an etiologic factor in atopic dry skin?」J Invest Dermatol.(96)(4),523-526.
  10. Di Nardo A, et al(1998)「Ceramide and cholesterol composition of the skin of patients with atopic dermatitis.」Acta Derm Venereol.(78)(1),27-30.

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